おるすばん(獅子鷲)


 Past : Will 2006年05月08日(月) 


春のそよ風が、前髪を揺らし頬を撫でていく。
けれど、裏腹に、日差しは夏のそれに近いくらいの暑さを示す時もあって。
じわりと身体を蝕む熱も、いつまでも冷める事なく疼く。


 低く笑って、手首に噛み付かれた。残る、感触。
 温い唇の、アイツの触れた跡。
 目に見えないアイツの痕跡を辿って、指先で触れた手首に、くちづけた。





 アイツに会いたい。
 キスしたい。
 めちゃくちゃにくちづけて欲しい。
 抱き締めて。
 会いたい。会いたい。会いたい。
 そんな事ばかり考えてる。


 ぐちゃぐちゃのどろどろの、頭の中が真っ白になる様な……。
 セックスが、したい……。



 「馬鹿か…俺は……。」
 薄く浮かんだ笑みは、自分を酷く貶めてく様なもので。

 「好き」と云う感情だけじゃ、
 処理出来ない自分の身体が、疼いて仕方ない。
 囚われる、熱。
 貪欲に求める、熱。絡め取られて、身動きが取れない。
 いつから、こんな風に変わってしまったのだろう。
 熱に浮かされる、自分の身体。
 ひんやりとしたテーブルの、金属の感触が心地良い。
 うっとりと、目を細める。


 アイツが欲しい。
 只、それだけ。酷く滑稽な事。
 アイツと云う存在を、身も焦がれんばかりに求めてるなんて。


 白檀(チャンダン)の煙が、少し目に染みた。
 インドの独特な香の匂いが、鼻孔を掠めて。


 この部屋でも、幾度か、抱かれた事があった。
 うっかりトレースした過去の情事に。
 馬鹿みたいに反応して。



 「逢いたい…」



 小さく、呟いた声は掠れて。


 逢いたい。
 キスして。
 抱き締めて。
 めちゃくちゃに、されたい…。


 抑え切れない熱情。溺れてしまいたい。
 切なげに零れた吐息。
 両腕で掻き抱いた身体が、巡る熱情に震える。





 生温い風がそよそよとそよいで、身体にまとわりつく。
 それが酷く、不快だった。


 「早く、帰ってこいよ」



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お留守番鷲ちゃん。
ははは春だからね!発情期!(病)


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