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大停電の夜に(獅子鷲) |
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| Past : Will | 2006年05月06日(土) | ||
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強気受けな48の裏的台詞 09. ちょっ…待って 23. ふざけるなよ を消化したつもり、です(笑) -------------------------------------------- 愛する人と共に過ごした数時間、 数日もしくは数年を経験しない人は 幸福とはいかなるものであるかを知らない (スタンダール) 三つのマッチを一つ一つ擦る夜のなか はじめは君の顔を一度きり見るため つぎのは君の目を見るため 最後のは君の唇を見るため 残りの暗闇は今の全てを思い出すため 君を抱きしめながら (ジャック・プレヴェール) 「あれ?」 目の前が、闇に閉ざされる。 走と岳は、同時に、相手が居るはずの方を見遣った。 「停電か…?」 「だね。…ほら、部屋の外にも明かりが見えないし」 走は、暗闇にいるとは思えないほどすたすたと窓に近づき、シャッと勢いよくカーテンをあけた。まるで洒落のように鳥目の岳とは逆に、わりと夜目が利くらしい。 「ちぇ。せっかくいいトコだったのに」 ゲーム機のコントローラーを片手にむう、と唇を尖らせると、やってらんねぇ、とばかりにソファにばふっと身を投げ出す岳。 「残念。せっかく勝てそうだったのにね」 「何か、お前、むかつく」 「気に障る?」 「…ホントのことだけど。ほんとのことだけどよ。やっぱむかつく」 マリオカートで7敗している身としては全てが嫌みったらしく聞こえるわけで。 「はいはい。また、電気がつくまでの間暫しお休み、だね」 くすくすと笑う余裕ぶった態度も。窓からソファまでの結構な距離をほんの数歩でつめるちょっとばかり自分よりも長い足にもむかつく。 よしよし。と頷く上に覆いかぶさるもの。 重なって一つになる影。 「ね、岳…」 離れた口唇に名を呼ばれ、伏せていた瞼を上げる。 「…ん?」 気だるげな仕種。 僅かに潤んだ眼差しに、引き寄せられるようにもう一度口唇を寄せて、髪を梳いた。 「知ってる?大停電の時に、人が何するか」 まだ頭がぼんやりしているのか抱かれたままの躯。 「…銀行強盗、とか、何かそういう悪さ系?」 職業柄、というか、しごく尤もな答えに苦笑すると、その額に羽のようなキスをひとつ落とす。 擽ったそうに岳は身を捩る。 「残念。答えはねぇ」 他に何の音もしないこの空間で、耳元に囁かれる答。 きょとん、と一瞬目を見開く愛しい人。 指を通り抜ける髪の、柔らかな質感。感触。 抱きしめる腕に伝わりくる、ぬくもり。 「…どいつもこいつも、他にやるこたぁねぇのか」 憮然とする岳が可愛くてたまらない。 「ん…まぁね、岳はそう思っちゃう?」 顔を寄せる。 瞳を覗き込む。 相手の眼には、自分以外映されていないのに幸福の溜息を一つ零して。 「自分と、好きな人以外何もない世界でさ、」 言葉の途中で降ってくる口吻け。 これが何度目のキスかなんて、知らない。考えたこともない。 「もっと、もっと深く相手の中に入りたい、って感じるのは自然じゃないかな」 触れて。感じて。這入らせて…もっと奥まで 此処にいるということを確かめたい。 ね?と、柔らかな光で同意を求められる。 「…いちいち、言い方がエロいんだよお前は」 洩れる、苦笑。けれど、それは否定ではなく。 「だってしょうがないじゃん」 目の前に岳がいて、何も考えるなって方が無茶。 頬に触れる口唇。自然な動きで睫毛を伏せれば、それを追うように移ってくる。 こめかみと瞼と。 「ちょっ…待って。擽ったいっての」 「我慢して?」 すぐに、気持ちよくしてあげるから。 身に纏うものが無くなり、直接互いの肌が触れ合う。 「…っ」 びくんっと震える滑らかな肌に、いくつも朱を散らしながら進む唇。 「…から、…、よ」 「ん?」 だから、と乱しかけた息を必死に整えて岳は続けた。 「…ッふざけるな、よ。みん、…ながやってっから、…ッヤんのかよ」 「…」 くそっと小さく呟き、少しでも走の視界から消えようというのか背けられた顔は耳まで赤い。 底はあるのか、と時々思う。 愛する気持ちに。 限りはあるのか、と思う。 たまらない魅力で自分を縛る鎖に。 これ以上なくお前に深く囚われて、身動きできない。 「んーん。岳が欲しいから…だから」 ぐちゃぐちゃに混ざり合って、一つになりたい。 薄皮一枚隔てただけでも我慢できない。 自分を隔てる、この身体が疎ましくて仕方ない。 向けられた赤い耳朶を甘く咬んで。 慌ててこっちを向いたところでこつん、と額と額を合わせた。 揺らぐ瞳。けれど反らされない視線。 「…な、ら…ゆるす」 「それは、恐悦至極」 「ん」 ぷっと吹き出すのは二人同時。 暫くお互い肩を震わせて、そうしてもう一度瞳を覗き込んだ。 「すきだよ」 「ああ」 「岳」 「…俺も、好きだからな」 宣言のように、睦言のように告げて。 告げられた走は瞳を大きく見開き、その僥倖にくしゃりと顔を歪め。 折れよといわんばかりに、全ての幸いをもたらす身体をきつく抱きしめ、貪るように口吻けた。 -------------------------------------------------- 少し前に、自室の電気の紐が根元からずっぽりと抜けました。 直す暇も無かったし、夜は暗いしで、暫く夜は自室で作業が出来なかったのです。自宅での仕事は大体パソ作業で、それはリビングでノート使えば良かったので大丈夫だったんだけれど。 というわけで、やっと直ったぜひゃほー!記念。 結婚(病)してから随分経つけど、相変わらず獣医は鷲ちゃんのふとした仕草にあー好きだなーやばいなー幸せだなー病気だなーとか思っててくれたらいいと思うよ(病) |
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