バージン・ビート


 Past : Will 2003年09月09日(火) 


ちょっとしたリハビリで書いたオリジナル(?)です。
某高校サッカー部。モデルが居るとか居ないとか。ね?>私信

ではでは、お時間拝借〜。





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どうせなら、可愛いよりはキレイ系かな。
でも背はそんな高くなくって。
胸も尻も控え目でいいから、手足が長いコがいいね。


甘ったるい顔にこれ見よがしな胸の、グラビアを放り投げ、温かくなったvolvicに手を伸ばす。

「ははっ、でも結局それって、カナリな高望みじゃないんすか?
実際、この前のコとかは全然違うし」

理想と現実は違うんだよ。つい最近まで何となく付き合っていたコのコトを言われ、小さく舌打ち。

「でもそんな、胸も尻も控え目で手足が長くてなんて、割り箸に楊枝みたいじゃないっすか。南條さんってシュミ悪っ」

俺もそう思う。
大体何で、そんなコトを言ったんだか。
冬の日差しが痛い屋上、その日差しに焼かれながら昼飯を食べたら、午後の授業に出る気が無くなった。
大体、こんな天気の良い日にあの薄明るい教室で微積なんて聞かされたら、脳にカビが生えそうだ。
だから、居合わせた後輩達を相手に、下らない暇つぶし。
海が近いもんで、風がものすごい。
皆自然と目が半開きになっていて、端からみるとかなり怪しい光景。

「あ、そういえば足が長いと、ヤりにくいって」
「俺もソレ、聞いたことある」
「誰に聞いた、ダレに」

声を立てて笑い、volvicを空ける。
本当は青空に向かって一服したいトコロだけど、試合が近いから節煙中。
だから、ポケットからしおれたガムを取り出して、噛み始める。


「お、田中さん」

錆びた金網から下を見ていた後輩が、言う。
その、名前。
広いグラウンド、その中央辺りを走る影。
大きなストライドで、ボールを追う。


「偉いっすね、ちゃんと授業に出てる」

おい。
厭味か、それ。

後輩の頭を叩いて、金網越しに下を見る。
運動部が着る黒のジャージは、安っぽいグリーンのジャージの群れの中では目立ちに目立つ。
それでなくても、慎太郎の優れた運動神経は他の弛んだ生徒たちを既に軽く、凌駕している。
温いパスを受けて、それでも手加減のシュート。
しかし当然ながら、キーパーは取れない。

「実際もアレくらいヘボいキーパーだったら、いいっすね」
「そうしたら俺なんて、毎回3桁得点だなー」
キーパーなのに?バスケじゃないんっすから、
げらげらと笑う後輩達。
その声を聞きながら、再び下を眺める。
シュートは見事に決まったって言うのに、本人はどうとも反応しない。
まああんなんじゃあ、お前は全然納得出来ないだろうな。
不満そうに髪をかきあげて、それでも好きなサッカーだから、一応は参加しているってカンジ。
長い手足をしなやかに動かして、またボールを追いかける。


ったく、偉いね、お前は。


「やべぇっ」

側でまだ笑っていた後輩が、イキナリ大声を上げる。
見ると昇降口に、教師の姿。
お前達、授業はどうしたっ。

「生理休暇なんですーっ」

呆れた言い訳を残し、反対側の昇降口に駆け出す。
運動部のエース達に、腹の弛んだ中年がかなう訳が無い。あっさりと教師を巻き、階段を駆け降りる。

「それじゃあ、南條さんっ」

そう言い後輩達は二階で、俺はそのまま一階へ。階段を抜けて、体育館へと繋がる渡り廊下に出る。

やれやれ、今度はドコで時間を潰そうか。

"あれ・・・"

角を曲って剣道場の脇に出たトコロで、流しに立つ黒いジャージ姿。
さっきまでボールを追い掛けていた姿が、そこにある。
裾を捲り上げて、流れる水に膝を浸す。

「ケガか?真面目に体育なんてするからだって」

声を掛けると、気まずそうに振り返る。

「何だよ。サボリのお前にそんなコト、言われたく無いね」

ついっと顔を背けて、また傷を洗い出す。
おいおいサボリじゃないぜ、大事な試合前にそういうつまらないケガをしたくないから、苦肉の策の自主休講なんだ。
何せ、ウチのキーパーは代わりが居ないモンで。
しかしこいつは。
はいはい、勝手にしてくれ。そう言い、傷を神経質な目で眺める。

「ちょっと、見せてよ」

側に行って、むき出しの足を掴む。
今年も炎天下の下、数え切れない程に試合をこなしてきた筈なのに、いつだってプロテクターとソックスの下に隠れてた脛は、予想以上に白い。

「痛てえな、放せよっ」

軽量級の躰を支える足は細くて、膝下が長い。
それを見たら、不意にさっきのハナシを思い出した。


『手足が長いコがいいね』


ナル程、そういうコトか。何となく、納得。
こんなモノを間近で見続けてたから、俺はあんな事言ったんだな。
だとすると、俺の理想は案外と近くにあったらしい。

「放せって、おいっ!」

傷はヒドクはない。
ちょっとばかし擦り剥いてるだけで、まぁせいぜい今夜の風呂は、バッチリとしみるだろうなって程度。良かった良かった。じゃあせっかくだから少しばかり、俺に付き合ってもらおうか。

「何だよそれ、俺にもサボれっての?」

文句を言う頭を抱え込んで、そのまま引きずり出す。

「おい、ドコ行くんだよっ」
「そりゃあ、ケガしたら保健室だろ?洗ったままにしておいたって駄目だぜ、慎太郎」

「保健室?こんなの何でもねぇじゃねぇか!おい、聞いてるのかよっ!」

喚き散らす煩い口を押さえて、スゴク間近で言ってみる。

「ちょっと、確かめたいことがあるんだ」

ホントにヤりにくいかどうか、な。
意味深な、低い囁き。
無論、こいつにはナニが何だか判らない。
一瞬の沈黙は勝手に了承と理解して、再び歩き出す。

放せって、おいっ。
放してやるよ、後で。

今すぐだ、聞いてんのかよっ。
はいはい。


「南條てめぇっ!結局、聞いてねえんじゃねぇか!」



どうせなら、可愛いよりはキレイ系かな。
でも背はそんなに高くなくって。

若い象牙色の骨に、細い針金みたいな筋肉と腱を絡ませた躰。
長い手足を泳ぐみたいに撓ませて、青い空とグリーンのピッチの境目を滑り抜けて行く。ぴんと張った皮膚の下に、キラキラした気持ちを一杯に詰め込んだ、そういうカラダがスキだ。

そのカラダの奥の、熱と鼓動が奏でるリズム。それが、



【バージン・ビート】



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