Sun Set Days
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2003年12月01日(月) 架空の街

 子供の頃の一人遊びのひとつに、架空の街をつくるというものがあった。
 遊び方は簡単だ。
 白い紙に、まずは大体の街の輪郭を描く。
 それから、いくつかの道路を描いたり、建物を並べてみたりする。他にも、たとえば右上の方に山々が連なる絵を描いてみたり、街を横切る河を描き足してみたりする。街と山々の間あたりに鉛筆の先をぐるぐるとまわして森を描いてみたり、ビルが立ち並ぶ大通りの場所にしばし悩んでみたりする。鉄道の駅の場所は何度も消しゴムで消しては、試行錯誤して考えてみたりする。おおまかな輪郭ができあがるところまでそれらを繰り返す。

 街の概要が完成したら、今度はその街に住んでいる人物を想像してみる番だ。
 それぞれの場所に、たくさんの登場人物を配していく。
 そして、これがいよいよ本番なのだけれど、彼(や彼女)たちが登場するたくさんのエピソードを考えるのだ。誰と誰が知り合いだとか、この人はこの人のことが好きなのだとか、そんなふうな空想を繰り返す一人遊びだった。
 紙とペンと時間があればできる単純な遊びで、けれども結構愉しかったのを覚えている。他愛のない、稚拙なものだったにしても、それがひとつの世界だったからなのだろうなと思う。
 だから、昔『シムシティ』という街をつくるゲームが発売されたときには、同じような遊びをしていた人はたくさんいたのだろうなと思った。何もないところに、街をつくっていくということの楽しさのようなものは確かにあるのだ。

 これまでにつくってきた街には何種類かあって、たとえば子供向けのアニメが一年間経ったら最終回になって別のアニメがはじまるように、ひとつの街をつくってそのエピソードを語りつくしたように思えると、今度は別の新しい街をつくってみたりしていた。
 あるときは海辺の街で、あるときは山間の街だった。北国の雪に囲まれた街があれば、南国の小さな島の中にある街であるときもあった。どんなときもそれらの街にはたくさんの人が住んでいて、様々なドラマが(頭の中では)繰り広げられていた。
 ある街に住んでいたお気に入りの登場人物が、別の街の空想の物語を作るときに引越しとか旅行とかで登場するという設定なんかもあって、個人的には結構楽しんで遊んでいた。
 いまではもちろん空想の街作りに没頭することはないけれど、それでもときどき白い紙に道路を描いてみたりすることがある。そんなときには、昔の「架空の街」の記憶が蘇ってきて、懐かしく感じられたりもする。
 あの頃、夢中になって想像していたある街の主人公のことを、ずっと忘れていたりしていて驚いてしまう。それは昔の幼馴染の名前すら思い出せないことに似ていて、なんとなく申し訳ないような気分になってしまうのだけれど。


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 お知らせ

 今年もいよいよ12月です。早いですねえ。


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