Sun Set Days
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| 2001年12月18日(火) |
森の動物たち�� さる江の恋の一部始終 |
衝撃の第3話
クリスマス特別企画
――森の動物たちシリーズ�� さる江の恋の一部始終――
(年末の2時間ドラマスペシャルのような雰囲気で)
――――――――
さる江のアイドルはブービーです。 ブービー。 そう、別名パーマン2号。 猿の世界のアイドルです。 旗包みなんかをかましてしまうワイルドなプロゴルファーと人気を二分しているのですが、彼はまあ自称サルなので、本当の意味でのさるNo.1はやっぱりブービーなのです。
さる江はブービーファンクラブに入っていて、次々と発売される初回特典つきのプロマイドやらイメージビデオやらポスターやらカレンダーやらマウスパットやらを通信販売で買っています。 そしてブービーの写真を見ては、はあといつもため息をついているのです。 そう、それはまさしく恋わずらいです。
くま吉とモグたんとSun Setさんは、そんなさる江を見て心配していました。 何だかんだ言ってもブービーはさるの世界のアイドル。 住む世界が違うのです。 いくらさる江が想いをつのらせても、それは届くことはないのです。
そんなある日――。
「決めたわ」 ある日森の広場でいつものようにくま吉とモグたんとSun SetさんがUNOをしていると、さる江がやってきてそう言います。
「決めたって、何をだい?」 いつも落ち着いているくま吉が優しく問いかけます。 Sun SetさんはDraw Fourをやられてしまったショックで放心状態のため、さる江に気がついていません。
「ワタシ、ブービーに会いにいくわ」 そういうさる江の瞳は希望に輝いています。肩には木の枝をしょっていて、その先には風呂敷に包まれた荷物がぶらさがっています。 旅に出るときの定番スタイルです。
「……さる江」 くま吉は呟きます。モグたんも心配そうにさる江を見つめています。 Sun Setさんは、壊れたロボットのような覇気のない手つきで、口惜しそうにDraw Fourのカードを山から取っています。まださる江に気がついていません。
「いままでお世話になったわね。そのうち、ブービーの婚約者ってことで、ワイドショーに登場することになると思うワ」 さる江はそう言うと、踵を返して森の外の方に向かって歩き出していきます。
「待っていてねブービー。いまからワタシが逢いに行くワ」 さる江の心のなかでは、彼女はヒロインです。そう、誰もが自分が主人公の映画のヒロインなのです。
ただし、森の動物たちはさる江のことが心配です。 特に、人生経験豊富で若い頃には夜の世界でも活躍していたくま吉は、さる江がどうなるのかがなんとなく予想できます(くま吉の過去は謎に包まれているのです)。
「こりゃあ……ワタシたちが一肌脱ぐ必要があるな」 くま吉はそう呟きます。頼もしい発言です。
さっそく、くま吉の合図で森の動物たちが集まってきます。 リス衛門にうさ子にケロポン(カエル)、そしてワッシー(ワシ)にウルフィー(狼)たちがぞくぞく登場です。 みんなSun Setさんの友達です。
「かくかくしかじか……」 くま吉はみんなに事の次第と計画を説明します(かくかくしかじかってこういうとき便利ですね)。
「なるほど。そりゃあなんとかしなくっちゃな」 リス衛門はリスなのになぜか江戸っ子気質です。さる江をなんとかしてやりたいって熱く思っています。
「さる江ちゃんの気持ちもわかるわ……切ないわね」 ロマンティストなうさ子さんの口はいつも×印です(ミッフィーを意識しているのです)。
「がんばるケロ」 ケロポンは舌を伸ばします。その長い舌でさくらんぼを結ぶことができます。忘年会の時期には引っ張りだこです。
「ふうむ。さる江には世の中の厳しさを味わってもらった方がいいのではないかと思うのだがな……」 ワッシーは結構クールです。
「ま、いいんじゃない。まだ小さいんだから」 姉御肌のウルフィーは、そう言ってガルルと小さく鳴きます。
一方、その頃さる江は――
都会に出てきたさる江は、たくさんの人や動物や自動車に目が回りそうでした。 「ね、ねえ、ブービーにはどこに行けば逢えるの?」 道行く人にそう聞くのですが、誰も取り合ってくれません。 危うく車に轢かれそうになったり、小さな子供たちに石を投げられたりします。
「ブービー……」 夕方、空き地のドラム缶の上に腰かけ、ブービーのプロマイドを見つめてさる江は呟きます。 都会にさえ出てくれば、すぐにブービーに会えるものだと思っていたのに……。 森の仲間たちの姿が思い浮かびます。 お父さんのようなくま吉。 勉強家のモグたん。 きっぷのいいリス衛門に、おしゃまなうさ子。 口うるさいけど本当は優しいワッシーに、ケロケロうるさいケロポン。 大人の女のようで憧れているウルフィー…… なんだか、もうみんなのことが懐かしいのです。
(……ねえ、Sun Setさんのことは?)
「だめだめ、弱気になっちゃだめ。ブービーに逢うまでは帰れないわ。ちょっとうまくいかないからって弱気になっちゃだめよさる江」 さる江は自分で自分のことを励まします。
翌日、あんまりよく眠れなかったさる江はブービーに逢うためにテレビ局にまで行きます。 そこには、ブービーの出待ちのファンのさるたちがたくさんいます。 都会のさるたちはみんなオシャレな洋服を着ています。 さる江は、この日のために一番気に入っているだんご三兄弟のTシャツを着ているのですが、周りでは誰もそんなTシャツは着ていません。さる江は自分が田舎もののような気がして物怖じしています。 それでも、さる江は勇気を振り絞って、ブービーが出てくるのを待ちます。
「きゃあぁあぁあ!!」 「ウキッウキッウキキキッ!!」
突然、周囲のさるたちがいっせいに騒ぎ出します。カメラのフラッシュが周囲を眩しく照らし出します。
ブービーです。
さる界のアイドルブービーは、「パーマン」の収録を終えテレビ局から出てくるところだったのでした。 「ぶ、ぶ、ブービー!! わ、わ、ワタシ……」 さる江は必死に前に出ようとします。 「あっ!!」 でも、隣の大猿に押されて、背後に弾き飛ばされてしまいます。 「い、いたいっ!」 さる江は必死にの集団のなかに分け入ろうとしますが、ぎゅうぎゅうのためにどうしても入ることができません。 結局、ブービーはさる江に気がつくことなく、出口に待たせてあるおかかえ運転手付きのベンツに乗って去っていきます。
「きゃあぁあぁあ!!」 「ウキッウキッウキキキッ!!」
去っていくブービーに向かって、ファンたちは手を必死に振りつづけ、それから一匹、また一匹と去っていきます。 そして地面に座ったままのさる江だけが一匹残されます。 冬の北風が通りを吹き抜けていきます。 地面に落ちている落ち葉が一際強い風に舞い上げられます。 さる江の頬を光るものが一筋伝います。
(やっぱり、住む世界が違ったんだわ……こんなことなら、ずっとTVで見ているだけのほうがよかった……どうしよう……あんなことを言ってでてきた手前、もう森にも帰れない……)
そのときでした。 さる江のもとに一枚のハンカチがゆらゆらと降りてきたのです。
「……?」
さる江は上を見上げます。 するとそこでは、一羽の鷲がゆっくりと旋回しています。 ハンカチは、その鷲が落としてくれたもののようです。
「ワッシーさん……」
さる江はそのハンカチを使って涙を拭います。けれども、涙は次から次へと溢れて止まりません。 ふと顔をあげると、ビルとビルの合間に、まるで家政婦は見たのように見慣れた顔が並んでいます。
「みんな……」
仲間たちはビルの陰から照れたように出てくると、道路を渡ってさる江の方に向かって歩いてきます。 途中、Sun Setさんだけ車に轢かれますが、みんな気がついていません。
「さあ、迎えにきたよ。一緒に帰ろう」 くま吉がさる江の頭を撫でながら優しく言います。 「明日は忘年会だぜ!」 リス衛門が軽快に飛び跳ねています。 「さる江にはもっといい猿がいるわよ。私ほどじゃないけど、あなたも可愛いんだから」 「うさ子……」 「ま、お嬢ちゃんにはいい勉強になったってことね」 ウルフィーがそう言ってさる江の肩を叩きます。 「ウルフィーさん……」
そして、森の仲間たちは、一緒に森に帰っていきました。 一人、Sun Setさんを残して……
……ゴフゥ!
車に轢かれたSun Setさんは、アスファルトの上で吐血しています。 身体全体が痺れているのがわかります。
「だ、だれか……たすけ、て……」
冬の寒い寒い夜。 さる江は仲間の優しさを、Sun Setさんはこの世界の厳しさを、それぞれ深く実感していたのでした……
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お知らせ
クリスマス前にもっとやることがあるのでは? というつっこみはやめてください。 (森の動物たちシリーズは、とりあえず一段落です)
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