2005年02月02日(水) 暗がりの中の銀色
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引越ししてから、もう4ヶ月。 まだ、前の家から持ってきたまま放置してあった荷物を 掃除のついでに少し整理してみた。
その中に、持ってきた覚えがないものを見つけた。
銀色の細いリング。 真ん中には、キレイにカットされた小さな石。
数年前のあたしの誕生日。 あの人とふたりで暮らしたあの家で。 日が変わると同時に、ずっと欲しがってたブランド物のポーチと 自分で買ってなくしたシガレットケースと同じ物をプレゼントされて。
なのに、泥酔状態だったあたしは、お礼もそこそこに寝ちゃって… 目が覚めてから、「ゴメンね」と、あらためて「ありがとう」を言ったあの日。 抱きしめられて、「おめでとう」って言われたあの日。
あの日の夜、あの人はあたしの正面に座って向き合って なんだか今となっては思い出せないような 意味のない前置きの会話が長々と続いて。
そしたら、突然手を握り締められて…
「絶対この手を離さへん。ずっと俺の隣にいて欲しい。」
そう言って渡された小さな薄ピンク色の箱の中には この、小さな石のついた銀色のリングが光ってた。
…と、思う。 その時も、酔っ払っててハッキリとした記憶がない。
お互いの両親や、親戚とも付き合いがあって あたし達は、周りには何も言わなかったけど 周りは勝手に、ふたりは一緒になるんだと思ってた。
周りの期待も願いも裏切って 結局は、別れちゃったけど。
あの人が出ていって、あたしもあの家を出る時に お揃いのマグカップも歯ブラシも、あの人の洋服も ケンカした時に一人で聞いてたCDも、全部処分したのに。 これだけは捨てられなくて、ずっと持ってたんだ。 もう、持ってたのも忘れてたけど。
あんなに大事にしてもらったのに あんなにあの人は、あたしを愛してくれたのに それなのに、あたしはずっとあの人の気持ちに ちゃんと答えることが出来なかった。
あたしは、あの人に何かをしてあげられてたのかな…
好きで好きでたまらないとか。 そんな感情はひとつもなかったのに。 なんでかな。ずっとそう思ってた。
思いがけないものを見つけて フッとあの頃の記憶がよみがえって しばらく思い出に浸った。
あの時はゴメンね。 いっぱい、いっぱい傷つけてゴメンね。
掌にある銀色を箱に戻し、 見つけた元の場所へ置いて そっと扉を閉めた。
…バイバイ。 |
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