解放区

2014年08月08日(金) ガードマン哀歌

昔書いたものの焼き直し。笑


職業に貴賤がないというのはもちろんだが、てめえが最も尊敬している職業の一つはガードマンである。

ガードマンを街で見かけると、てめえはほんまに、彼らに対してごくろうさま、という気持ちになる。ただ交通整理をしているだけとの見た目と違って彼らの仕事が過酷であることは、てめえがかつて植木屋で働いていたときに嫌と言うほど感じたのだ。

現場には雇い主よりも早く着いていなければならず、そのために彼らの朝はやたらと早い。また現場の仕事が遅れれば、その分だけ彼らの終業も遅くなる。しかし、現場の仕事が終わらなかったからと言って「すんません、もう5時ですので帰ります」なんて口が裂けても言えない。

そして単調に見える交通整理の仕事は、一瞬でも気を抜いたら現場の人間からたちまちぼろくそに怒鳴られる。結構理不尽な仕事だな、と思ったものだ。


植木屋で働いていたある日のことだが、その日は街路樹の剪定をしていた。公道にある街路樹の剪定をするときには、植木屋は必ず安全のためにガードマンを雇わなければならない。ので、その日も二人のガードマンのおっちゃんが現場に来ていた。

その日は昼を過ぎてもその日の目標の地点まではまだ遥か遠く、親方は結構いらいらしていたのだろう、なんでもないことでガードマンのおっちゃんを理不尽に怒鳴りつけていた。いつもは何本かの剪定を終えるたびに、てめえはてめえの単車を少し前に移動するのだが、その日は忙しかったのでそんなヒマもなかった、というか、単車を移動することをすっかり忘れていた。

もうとっぷりと日が暮れ、ようやく仕事がすべて終了したときに、てめえは単車を橋の向こうに置きっ放しにしていたことに気が付いた。その大きな橋はいったい何を考えて作ったのかわからんが歩道が無かった。つまり、交通手段がない限り向こう側には渡れず、かなり遠くにある橋を渡って向こう側に渡るしかなかったのだ。

もう仕方が無いので橋の欄干の上を歩いていくしかないか、となどと考えていたら、仕事を終えたばかりのガードマンのおっちゃんが何を思ったかてめえのところにやって来た。自分の原付でよければ橋の向こうまで2ケツしましょうか、と。

それからノーヘルのてめえを乗せた原付は、渋滞気味の車の間をすり抜けて、その橋の上を疾走した。ガードマンの制服を着たおっちゃんと、足袋を履いた植木屋が2ケツしている姿は結構笑える図だっただろう。そもそも原付の二人乗りもノーヘルも法律違反だが、時効ということで許してもらう。

そしててめえは、なんだかバイクに初めて乗った中学生のような不思議な気分になった。橋の上から見た川の波は、どっぷり沈んだ街の闇と光をしっかりと吸い込んでいた。


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