よるの読書日記
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2006年03月20日(月) 旅行の友 (別名お荷物)

乗り物酔いのくせに、つい本を用意してしまう。
待ち時間とか停車中とかあんまり揺れを感じないような時に
切れ切れに読むために。あるいは、宿で暇を感じないために。

金沢一泊旅行のために、バスの待ち時間に買ったのが
『恋』<小池真理子/新潮文庫>
言わずと知れた直木賞受賞作。最近の(と言っても京極さんと
江国さんのしか読んでないけど)直木賞って作家に
あげてるんじゃないの?!という私の中での印象がようやく
弱まりました。何か偉そうだな。つまりえー、××さんが
直木賞受賞、とニュース見て、受賞作!と帯ついてる作品を
読みたい、物知らずでいたいからなんですが。
だって前述の二人に限って言えば何故数ある著作の中からこれが
受賞?!って感じだったんだもん。大体『後巷説百物語』なんて
タイトルから明らかに続編じゃん。ビギナー向けじゃないと思うわ。

そういう私も小池真理子という人はミステリー作家だと長らく
思っていて(そういうアンソロジーに短編が収録されていたから)
どうも好みの作家ではなかったのですが、タイトルに惹かれた
『狂王の庭』で完っ全にノックアウトされてしまいました。
もしいきなりほれ、直木賞受賞作だよって渡されたらこの本を
読んでたかは怪しいですが。だって『恋』ですよ。気恥ずかしい。
でも、人が人に惹かれる、正に恋そのものを描いているのに、
何とまあ非倫理的で残酷な物語なんでしょう。
そして何より美しい。
普段着で来た痩せっぽちの女学生が片瀬夫妻と出会う
桜舞い散る華やかなガーデンパーティは何だか本を閉じても
目に浮かびます。
ヒロインはこの時点でもう一目ぼれ状態だったんだろうなー。
この貴族的な空間の外では学生運動が真っ盛りで、自分にも
同棲してる活動家の恋人がいるのにですよ。
子爵のご令嬢という言葉が何がしかの力を持っていたり、
まだそんな時代。

社会的には何の力もない妻の恋人がユートピアを壊す
悪魔のように描かれているのも興味深い。読者が見ても、
抗いがたい魅力はあるけどいい人に見えないの(笑)。
自分でもどうにもできないのが恋ってことでしょうか。

ちなみに今回、行きの高速バスではものすごい混んでて
補助席に乗せられて食べ物の臭いがして読むまでもなく酔いかけ、
旅行中は皆で盛り上がり、帰りのバスではうとうとして、
それでも三分の一は読んだかなぁという感じ。
残りはおうちでゆっくり楽しみました。
何故か薄い本や上下巻の上だけ持ってった時に限って、
読みきっちゃうんだよねー。


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