よるの読書日記
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2003年12月27日(土) 結びつき

『取替え子』<大江健三郎/講談社>
私はずっと大江さんと故・伊丹さんの関係って
大江さんが伊丹さんの妹と結婚したことによる「義兄弟」だと
思っていたのですが、それも間違いではないけど、
より正確を期するならば大江さんが高校時代からの親友であった
伊丹さんの妹と結婚した、というのが真相のよう。
しかも反対を押し切って。
大江さんがもしも息子の光さんを授からなかったら
もっと短命かつ破滅的な人生になったのでは、というのは
わりとよく語られていることですが、伊丹さんの反対も
どうもこの点にあったようで。それを思って「静かな生活」の
映画版なんか観ると、何だか伊丹さんの大江一家に対する、
兄として、親友として、伯父としての眼差しみたいなものを
感じて不思議。
この小説は親友であり、義兄弟でもあった彼を、ああいう形で
失った大江さんのほぼ私小説のようです。
大切な人を失った喪失感。そしてまたそこから違う一歩を踏み出す
物語とでも言えましょうか。

取替え子と言うのは、妖精だか魔物が可愛い子をさらって醜い子供を
置いていくという西洋の伝承だそうで。
死の原因と噂された若い女性にまつわることと彼女のその後の話も
出てきます。人の縁って不思議です。何だかそう思いました。


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