よるの読書日記
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2003年12月10日(水) 大陸の空

『赤い月』下<なかにし礼/新潮社>
うーん。凄いですよねぇ。昔の恋人の助言で満州渡って、
造り酒屋で大儲けですって。
母子で着道楽したり(ばんばん着物作ってどんどん着て、
すぐ使用人なんかに下げ渡す。お姫様かあんた達は。)
長男が訓練中に飛行機を駄目にしたと聞けば一機献上したり。
満州って、皆が皆開拓などで苦労してたのかと思ってた。
うまい汁吸ってた人もいたんですね……。
結局は日本は負け、ソ連軍が乗り込んできて、また国土を
奪われていた形の中国の人々は復讐心をたぎらせ、
陸軍関係者として威張ってた人も、ぼろ儲けしていた商人も
一般市民も皆、本当に大変な思いをして逃げ惑い、もがき、
母国へ帰還しようと誰もが苦しみを味わう訳ですが。

子供が全てで、そのために生きようとするのでなく、
自分がかわいくて、その生きがいとして必要だから
子供達を何が何でも連れて日本に帰ろうとする波子さん。
すごい理屈のようですが考えてみればやっぱり新しいタイプの
女性だったのでしょう。
嫉妬のあまりロシア人女性のスパイ容疑を密告して死なせたり、
激しいこと炎の如し。かっこいいかもしれません。
でも、母親に反発する娘(なかにしさんのお姉さん)の
気持ちもわかるなぁ。
お父さん子だったみたいだし。他の男を愛し、生きるためには
とことんしぶといお母さんを、お年頃でしかも所詮乳母日傘の
お嬢様として育てられた娘に理解しろというほうが難しいよね。

逆に、『兄弟』で兄ちゃんにひどい目に合わされながらも、
お母さんを人質みたいに取られてて良いように利用されていた
なかにしさんて、マザコン……。なんて失礼にも思ってたのだけど。
仕方ないよね。こんな体当たりで激しいお母様だったのなら。
お母さんが特別になって当然だわ。


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