よるの読書日記
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『赤い月』下<なかにし礼/新潮社> うーん。凄いですよねぇ。昔の恋人の助言で満州渡って、 造り酒屋で大儲けですって。 母子で着道楽したり(ばんばん着物作ってどんどん着て、 すぐ使用人なんかに下げ渡す。お姫様かあんた達は。) 長男が訓練中に飛行機を駄目にしたと聞けば一機献上したり。 満州って、皆が皆開拓などで苦労してたのかと思ってた。 うまい汁吸ってた人もいたんですね……。 結局は日本は負け、ソ連軍が乗り込んできて、また国土を 奪われていた形の中国の人々は復讐心をたぎらせ、 陸軍関係者として威張ってた人も、ぼろ儲けしていた商人も 一般市民も皆、本当に大変な思いをして逃げ惑い、もがき、 母国へ帰還しようと誰もが苦しみを味わう訳ですが。
子供が全てで、そのために生きようとするのでなく、 自分がかわいくて、その生きがいとして必要だから 子供達を何が何でも連れて日本に帰ろうとする波子さん。 すごい理屈のようですが考えてみればやっぱり新しいタイプの 女性だったのでしょう。 嫉妬のあまりロシア人女性のスパイ容疑を密告して死なせたり、 激しいこと炎の如し。かっこいいかもしれません。 でも、母親に反発する娘(なかにしさんのお姉さん)の 気持ちもわかるなぁ。 お父さん子だったみたいだし。他の男を愛し、生きるためには とことんしぶといお母さんを、お年頃でしかも所詮乳母日傘の お嬢様として育てられた娘に理解しろというほうが難しいよね。
逆に、『兄弟』で兄ちゃんにひどい目に合わされながらも、 お母さんを人質みたいに取られてて良いように利用されていた なかにしさんて、マザコン……。なんて失礼にも思ってたのだけど。 仕方ないよね。こんな体当たりで激しいお母様だったのなら。 お母さんが特別になって当然だわ。
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