よるの読書日記
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| 2003年06月17日(火) |
和製エロスとバイオレンスのゆくえ |
『魔界転生』下<山田風太郎/毎日新聞社> 剣の道に取り憑かれて魔物への道に転落してしまった者達に比べて、 対する柳生十兵衛は一見ぐうたらですが情が深くて人間臭いです。 一応大名の跡取りとしては問題ありだけど、剣客の息子としては 立派なもんです。でも誰よりも強くなりたがる人達にとって 自分の子供がとっても強いってすんごく困った事態よね……とほほ。 その上手塩にかけた弟子でもあるわけで。 これが芸能だと年とともに円熟していくわけで子供が 「いやーまだまだ師匠には敵わなねぇ!」となるけど、武芸は どう哲学化したって体力勝負なところあるんじゃないかと思うし。
可憐なヒロイン達、三人もいると一人ぐらい人身御供に なっちゃうのかと最後の最後までハラハラいたしました。 ……ま、父や祖父をぶち殺された上魔物の餌食じゃあんまりだよな。 間一髪ってほどでもないか。もう十分酷い目に遭ってるし。 将軍家転覆の危機を救っても大切な人達に後を頼まれた子達を 守れなかったんじゃ意味ないわよね。 かと言ってよっしゃ、三人まとめて貰ってやる!というわけにも 行かないだろうし(時代的にはオッケーだろうが)。 魔物化しちゃったとは言え父と闘っちゃってるし。 十兵衛は何処へ。中々渋いラストでありました。
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