よるの読書日記
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2003年03月13日(木) 男の嫉妬


征夷大将軍の娘として生まれ 天皇に嫁ぎ、そして自分の娘が
帝となった和子(まさこ)姫。当時の女性としては
最高の富と名誉に恵まれた彼女ですが、幸せとばかりも
言い切れなかったようです。
魑魅魍魎の跋扈する宮中で、所詮武門の出と軽んじられ、
嫉まれ妬まれ、夫と実家の関係がこじれれば
夫の心も遠ざかり…… 。

『東福門院和子の涙』<宮尾 登美子/講談社>は、生い立ちから
彼女を見つめ、彼女が決して政治の道具ではなく、一人の
人間だったことを侍女の目から描いています。
徳川三代と言えば大河ドラマでも毎回のように出てきますが、
有名な人間関係が、この和子姫の性格に関わっているのが
生き生きと伝わって面白いです。
二代将軍夫人が自分の育てた次男を可愛がり、春日局が育てた
長男を愛さなかった、というのはもう有名すぎるエピソードだけれど、
生まれたばかりの妹姫の小さな握りこぶしに、長男が
噛み付いて――初めて赤ん坊を見るような男の子なら
やりかねないことですが、女児をたくさんを育てたおごうの方には
しつけの足らない乱暴な所作として映った、というのは本当に
ありそうに思えます。

またほとんど側室を持たず妻を大切にした父を見て育てば、
一夫多妻が当然の宮中生活は辛いものだったでしょう。
しかしこれをサポートする父ちゃん兄ちゃんのすることがすごい。
帝のお手がついて身ごもった女性を、……コワーイ。
愛を争う女達より、権力が絡んでいる時の男のほうが、残酷で
非情です。くわばらくわばら。


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