よるの読書日記
DiaryINDEX|past|will
| 2002年05月21日(火) |
見えざる者 我を導く |
何だか最近、作家と小説との関係、というのが読書の上での 隠れテーマのような気がします。こういうテーマは 自分で決めるのでなく、無作為に本を選んでいても それに関するものが引き寄せられてくる気がする。 で、『天啓の宴』<笠井潔/双葉社>もそうして やってきた本です。 思えば笠井潔という作家を知ったのも小説を 読んでいてのことでした。 その著者の吉本ばななというお人は私の知る限りでは 小説の重要な場面に置いて他人の書いた小説を使う、 というのを二回ほどやっているのですが、これが まともに大学出たとは思えない(やや誇張あり) ろくでもない引用のやり方で。 今ならインターネットの検索サイトにキーワード入れれば すぐ答えが出ると思いますが、 中高生時代の私にはきつかった。 一回目は『TSUGUMI』<中央公論社>で つぐみがまりあにあてた手紙に『デッドゾーン』という タイトルとあらすじだけをちょっと書いてあるもの。 これはこのあとエッセイとか、他の本のあらすじから スティーブン・キングが好きだと知って、そこから探して ようやく新潮文庫から出ているのを見つけました。 4年くらいかかったかな。
そして2回目が『アムリタ』下<福武書店>で、 転んで記憶をなくした主人公が偶然書店で手にした 『哲学者の密室』(私は未読)を読むうちに それがかつて自分の愛読したシリーズの続編だと 気づき、そのうち押し寄せるように記憶が戻る――という場面。 これはまだ作者名、大体のタイトルが列挙されているから (2作目は『アポカリプス殺人事件』じゃなくて 『サマー・アポカリプス』<創元推理文庫>だけどね) いいですがやっぱり出版社がどこにも記されていなくて、 半年か1年くらいかかったように思う。 小説だからその中できっちり書けとは言わない、 巻末にわざとらしく謝辞書けとも言わないけれど 歌詞なら一部分でも必ず著作権関係きっちりなってるのに 出版物についてのこのアバウトさはどうだろう。 本人じゃなくても周囲に何とかして欲しかった私。
なれそめ話が余計に長くなりましたがそうやって見つけて 読んだ笠井さんは、――難しかった。 難しい。哲学的。でも面白い。 面白いんだけどその面白さをうまく表現できない。 何だかやたら難しかった。 そして、久しぶりに読んだこの本は、 圧倒的に面白くてやっぱり難解でした。 読書の神様(いるのか知らんが)って意地悪ね。 ほぉらお前なんかまだまだ井の中の蛙なんだよと からかわれているような。 チクショー釈迦の手の上の孫悟空の気分よ。
|