目口覚書
■目口覚書■
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2003年06月16日(月) 車内操作に御用心

おこんばんは

目口@出張の中休みです。

いやさ、のんびーり食っちゃ寝状態。
風邪も漸く治まり ただただ無駄に怠惰に
時間を食いつぶしております。
明日からは神戸本社に出勤です。
いやです。会社行きたくありません。

新幹線の座席で、パソコンをあけてるビジネスメンを見ると
毎度思い出すことが。

通路を隔てた隣りの席に、
いかにも几帳面そうな若いサラリーマンが前席の背中から、デスク(?)を広げる。
前席の背中には、それまで収まっていたデスクの大きさにくぼみがある。
そのリーマンは、自分のノートの角を、そのくぼみに丁寧に合わせる。

その所作に、もやもやと違和感を感じつつ、
私が出張で必ずパソコンを持ち歩いていた時は、
新幹線ではデスクは使わず、自分の膝の上に置いてキーを打っていたな…
などと考えていた。
なんでだったのかなー とか思いながら、
窓に映るリーマンの姿をぼやーっと眺めていた。


いつの間にか私は眠っていたが 新幹線は米原を過ぎ 京都が間近いようだ。
ヤングリーマンは 猫背で画面に向っている。
私は伸びをしようと首を彼のほうへまわした その時、

リーマンの前の座席、つまり彼が出したデスクを背に座っていた会社員が
やにわズン!とシートを後ろに倒した。

わぁぁっ!

車両に断末魔の叫び。


リーマンのパソコンは、ご丁寧にも隅をきっちりと背のくぼみに固定されている。
身動きとれないパソコンは、マックスに倒される座席の角度に応じて、
液晶画面が まるでセルロイドの下敷きのように、
ビロ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンと、反り返った。
ビロ〜ン。
摩擦して 頭部にくっつけたら、髪の毛が逆立つ威力は充分にありそうだ。

断末魔は パソコンの持ち主だった。
おそらく、その几帳面で大人しい風貌から察するに、
そんな大声を出すのは、出産の時以来ではなかろうか。

彼自身、自分の大声に驚いて固まっていた。
しかし、もっと驚いていたのは 座席を一挙に倒した 前のシートのおっさんだろう。
後部座席を振り返り、画面がべろんとめくれ落ちたパソコンから 全てを察し、
目を真ん丸に見開いたヤングリーマンと、しばし見詰め合っていた。

前の席の会社員は、何か喋ったら自分のせいになると察したのか、黙ったままだ。
後部席のリーマンも、相手を責めたいが
それまでの人生が概ね人と争うことに費やされてなかったため
「てっめー、なんで急に倒すんだよ!」などという野蛮な言葉など出てこない。

まじ固まっている。
車両の人々は、さきほどの叫び声で、惰眠から覚まされ
どんなドラマより面白そうな事の顛末を 固唾を飲んで見守っている。

かくいう私は ドキドキしながら、窓に映る彼らを凝視していた。

京都も過ぎたが、新大阪まではまだ時間がある。
顔は泣いているが、言葉を発せない気弱なリーマンとのにらめっこに飽きたのか
前の席のおっさんは、立ち上がった
どうやら、この空気に耐えるのも苦痛で 車両を変わるようだ。


ベロンとめくれたパソコンを前に
呆然と座っているリーマンは、
ようやく、パソコンの隅を デスクのくぼみから抜き出した。


想像力が大切なのだ。
こうすると、こうなるかも、という想像力が危機管理に繋がるのだ。
それは、経験値ではなく 新幹線の座席が決して自分1人の世界ではない
という謙虚さというか、まぁ当たり前の洞察というか。

かのヤングリーマンは あれからどうしているだろう。


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