体位
 しお



 ひとつ恋を終わらせる

初めて会ったとき、
むこうから歩いてくる彼を見つけて、
おたがいにすごく幸せな笑顔が、
自然に出た。

あれから6年。

いつもおたがいの存在を心に残したまま、
いろんな人と出会っていろんなことがあった。

そうして離れていても、
私たちは、
お互いを必要とする気持ちが、
きっといつか、
ふたりを巡りあわせて、
再び結び付けてくれ、
ずっと死ぬまで一緒にいられると、
そう思っていた。

だけど、気付けば、
わたしはいつも同じ理由で、
彼から逃げ出した。

なんども再会して、
わたしはいつも逃げ出した。

そして今回も。

これで終わりにしようと思った。
彼から永遠に逃げ出すことを決めた。

中途半端に想っていなかったからこそ、
決断の意味は大きくて、
彼の幸せを願う気持ちも大きくて。

彼を解放したい。

わたしがこれから出会う罰や不幸せは、
反対に彼を幸せにすると信じたい。

わたしは、彼の、静かに流れる愛情を、
刺激とは縁のない穏やかな生活を、
自分の望むものと 思えなかった。

わたしは、今にも切れそうな細い線や、
激しくてすぐに燃え尽きてしまいそうな短い恋や、
震えの止まらないセックスや、
神経をすり減らすような疲労や、
そういうことを繰り返して生きていく。

彼に恋をして、
ほんとの自分をみつけてしまった。

ひとつ恋を終わらせる、
静かに少しづつ、
わたしを落としていく。

2004年09月14日(火)
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