兼松孝行の日々つれづれ

2018年03月29日(木) 津島北高校演劇部「エンターティナー The New One Step」本番!

本番を終えて、まず熱いものが溢れ出てきた。
それだけいい芝居だったんだ。
この数日のうちにしっかり生まれ変わった。
でも同時に、もっとはやく生まれ変われよ、という思いも溢れ出てきた。
夏の大会に向けてやらなければならないことも、ぶわっと溢れ出てきた。
それだけのことを思わせてくれる結果を見せてくれたんだなぁ。
良かった良かった(T-T)

ついでに忘備録

エンターティナー総括

・本番について
芝居を自分たちのものとしてできた公演でした。
ラストシーンは流石にグッとくるものがありました。
仕事に疲れているおじさんは癒されました(笑)
公演は大成功だったと思います。
稽古中からこんな感じで本番を想定してやってくれたらなぁって思います。

・今回の公演で見えた課題について
60分間同じクオリティで芝居を続けることを日々の稽古で行っていきましょう。ストーリーの上で緊張感が高いシーンとそうではないシーンで、芝居のクオリティにムラがあります。言い方を変えると盛り上がるシーンでは動きもお聞く声も大きくなっていますが、そうでないシーンやそうでないセリフが動きが小さかったり声が小さかったりします。そう言った部分を気をつけるだけでもお客さんの印象がガラッと変わります。また、舞台上で行われるすべての出来事に意味があると思ってお客さんは見るので、役者の何気ない指先の動き一つでお客さんの芝居に対する印象が変わってしまう可能性があります。そうした部分にも気を配ってください。言い方を変えると不必要な動きはしてはいけないということです。
 音響について録音する音質についてもう一つ精査しましょう。普段の稽古場では気づきませんが、会場の大きなスピーカから流れる音は音質がダイレクトに反映されてごまかしがききません。普段稽古場で使っているスピーカはスピーカそのものに音を補正するチューニングがされているので、ショボい音もかっこよく聞こえてしまうのです。今回の芝居で一番キレイな音はサンプリングマシーンに入っていた効果音です。まずは録音する元の音質を確かめて、さらに録音時のピットレートや形式に気をつけましょう。また、今回はセリフとかぶる部分の音を下げすぎているのと、ダンスシーンやラストシーンでガンガンいくところはもっと上げても良かったのかなぁと思います。日常では経験できない大音量を経験できるのも劇場の魅力の一つです。また、音量が大きさと感動の大きさが比例することも確かです。
 照明については、今回「先読みの照明」が多かったように思います。「次の場面はこうなるよ」っていうことを先に照明が説明してしまっていました。場面や役者の気持ちと同時かそれよりもやや遅めにクロスを返していくと舞台上の気持ちとリンクできて効果的な照明になったと思います。またホリゾントは今回の芝居は使わなくても良かったかなって思います。使うならばホリゾント(地平線)という名前のとおり時間の経過を説明する使い方でいいのかなと思います。ホリゾントの色ではお客さんは場面の気持ちを汲み取ったりはしません。それは色そのものに意味がないからです。気持ちを表現するのは役者に当たった照明が作り出す明暗(光と影)です。次回の芝居で悩んで考えましょう。

追伸:幸い素材公演という再演の機会があるので、色々試たり修正して見ましょう。同時に「再演」で「初演」と同じ新鮮さを感じられないことも体験してみましょう。その経験が「地区大会」から「県大会」に行った時の対処法となります。素材公演が終わった後に何が違ったか、もしくは同じだったかをみんなで話し合ってください。

・今後やるべきこと(「あゆみ」想定で夏大会に向けて)
 役者についてはまずはインプロのフォーカスを徹底的にやってください。また、エイジウォークも時々やってください。本は酒井先生が持っているので必要な部分をコピーしてもらいましょう。同時に演出はフォーカスをやっているときに自分自身がどこに目がいくかを自覚できると良いです。要するに演出自身の目がいくとことがお客さんの目線ということです。
 装置については全く何もない想定ですが、それでも芝居を良く見せるための補助的なものは舞台上に必要かと思います。それが何か考えましょう。
 衣装は全員完全一致にするか不完全一致にするか、はたまたバラバラにするのかを、台本をじっくり読んでどんな役者像が求められているのかを演出と共に考えましょう。
 照明はホリを使わない=大黒を使う方法で照明を組み立ててください。また、LEDの使い方でいろんな表現ができるので、いままでの賑やかしみたいな使い方ではない方法を、いいかえると芝居の重要なシーンの重要なあかりとして使う方法を考えましょう。
 音響は使うならば、起承転結をしっかり作って音選びをしましょう。起承転結を実感する方法として選んだ曲を最初から最後まで続けて聞いてみることです。一本のライブの選曲をしてる感じになってればいい感じです。例えばビートハイの選曲を最初から最後まで通して聞いて見てください。しっかり起承転結のストーリーができていると思います。もちろん、選曲は立ち稽古に入る前に完成させておいてください。
 演出は、先日渡した本を読んで必要なところを演出に生かすようにしてください。大事なことはあの本にほぼ書いてあります。
 お父さんお母さんが生粋の愛知県人である人は、普段の家での名古屋弁をチェックしておいてください。そして、自分自身の言葉もね。

・演劇集団としてのルールづくり
 稽古は第1の観客である演出を目の前にした本番です。お客さんを目の前にしていれば絶対にしないことはしないようにしてください。稽古中一番目立つのは、演出が止めてないのに役者が勝手に芝居を止めてしまうことです。セリフを忘れたかもしれないし段取りを間違えたかもしれないけれど、そこで止めずに続けていくことも本番想定の稽古となっていきます。今回の本番でも役者がなかなか出てこなくて心臓が止まりそうなシーンがありました。ああいう場面で芝居の質を落とさずにつないでいくための稽古も必要なのです。
芝居は音のメディアです。なので、静寂も必要な「音」になります。演出が芝居を止めるまでは本番同様不要な会話や不要な動きで音を出したりしないようにしましょう。
演出が芝居を止めた後に、役者は必ずその場で立ち止まってください。演出は気になる場面で芝居を止めるので、そこから動かれると困るのです。そして、演出との会話はその場でしてください。それが全体で共有する情報となります。芝居が止まった後に役者同士で勝手に会話をしないようにしてください。必要なのは第1の観客である演出との会話になります。それは裏方でも同じとなります。
芝居の稽古は全員で向き合いましょう。どんな少人数の役者の稽古でも稽古中は裏方も含めて全員で集中して臨みましょう。反対に裏方の仕事も全員で行いましょう。稽古日と裏方の作業日とは同じ日にならないようにしましょう。
役者の欠席があっても芝居の稽古は予定通りしっかりとやってください。欠席した役者の分は代役を立ててください。代役は今までのように前から見てセリフをいうだけの代役ではなく、必ず一緒に立って動いてください。休んだ役者から役を奪う気持ちでやってください。重ねて言いますが稽古は本番想定なので役者がなんらかの理由で出られなければ、誰かが代わりにやらないと幕があかないからです。
裏方の取りまとめは舞台監督が行なってください。稽古日程と裏方日程の調整も舞台監督が演出と相談して行いましょう。舞台監督は裏方が行う全てを把握する必要があります。ある場面で舞台上に誰がどんな色の衣装を着て出ていて、どんな音が流れていて、どんな照明になってるのかを把握しておくのです。そうすることで現場で実行できないプランになっていないか、もっと楽にできる方法はないかなどを確認できるのです。
大雑把に言ってしまうと、本番でお客さんが見るものに責任を持つのが演出でそれ以外が舞台監督と言うことになります。そうした組織を意識して部の運営をして言ってください。

色々要求をして窮屈に感じるかもしれないけれど、必要最低限のルールを書いたつもりです。
自分で劇団をやっていた頃は週3回夜間の稽古でサイズが120分の芝居を作っていました。だからみんなが集まってくれている稽古場は1分たりとも無駄にはできなかったのです。プランは家に帰ってから作っていました。お客さんから時間とお金をもらってそれに見合う芝居を作っていくということはそういう責任を負うことなのです。お客さんがつまらないと感じてしまえばもう次からは芝居を見に来てくれないという恐怖との戦いでもありました。お客さんが面白いと思うものを作らなけれなならないという制約がありました。高校演劇は他校の演劇部員が大多数とはいえ見てくれるお客さんがいるのが前提なので、お客さんがいなくなる恐怖からは解放されているので、反対にそれだけ自由にどんなことをやっても大丈夫なのです。
演出である自分は空間、音響、照明のプランと音響オペをやっていましたが、10人出る芝居を12人の劇団員で作っていたのでそういう状況になったわけです。ですが、今の演劇部は幸いにして人数がいます。それぞれ責任を分散してみんなでやっている今の方法があっていると思います。ただ、みんなが自分の思いだけを形にすることにこだわってしまうと、一緒に舞台に乗せた場合に一つのものにならないです。そのために演出と舞台監督と言うまとめ役にまとめてもらう必要があります。同時に、演劇部員全員が目の前の芝居に対して台本を何度も読み込んで想像して妄想して立体化して、こうなったらいいよなあっていう理想を作り上げていった上で進めてほしいと思います。一役者であっても一裏方であっても、今作っているものがどうな風に見えるうだろうという客観視をする視点を持ち合わせてほしいということです。それがお客さんの視点ということになります。

昨年は尾張地区から中部に行った高校がありませんでした。結果を見て傾向が変わったとか、審査員が入れ替わったからとかいろんなことを言う人がいるかもしれません。でも、単純に他地区の高校の芝居が良かったって言うことだと思います。
ここに書いたことを全部やったら絶対に中部に行けるのか、と聞かれれば答えは絶対いけるとは言えません。ここに書いてあることは台本のセリフやト書きと同じです。それを立体化して表現するのが演劇部の皆さんです。でも、今日の芝居のラストシーンで見せたあの思いがあれば、きっといい結果をつかみとることができるんだろうと信じています。それだけ、心を動かす芝居を今日見せてもらいました。また一緒に頑張っていきましょう!


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