| 2009年09月15日(火) |
名古屋平成中村座「隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)法界坊(ほうかいぼう)」 |
うむむ、ふりがなを付けんと読めん(笑) この演目は「隅田川続俤」が正式な演目名で「法界坊」は通称だとモノの本に書いてあった。
今年、オイラ的には最大の演劇イベントになるであろう、名古屋平成中村座。 本来だったら、嫁さんとこの日を目指してチケットをとったのだけれど、残念ながら免疫力を落とす薬を飲んでいる関係で、人の密集する場所はNGと言うことになってしまった。 代わりに急遽、芝居仲間にピンチヒッターをお願いした。
中村勘三郎が名古屋城二の丸に仮設小屋を建てて、1ヶ月間公演する名古屋平成中村座公演。 もともと名古屋は中村姓発祥の地であり、初代中村勘三郎の出身地であるとも言われている。 その縁あって、3年前には名古屋市中村区にある同朋高校の体育館で4日間の襲名披露公演の千秋楽を行っている。 そして今回は名古屋城に場所を移し、1ヶ月公演である。
仮設劇場は、仮設とは言っても立派な歌舞伎小屋になっている。 860席の江戸時代風の小屋は、空間そのものが歌舞伎の舞台セットとしての作品として出来上がっている感じだ。
芝居の方は、もう何というか、演劇ってこういうもんだっていう見所満載の素晴らしい舞台だった。 勘三郎と笹野高史、そして亀蔵の3人がとにかくやりまくる。 何をやりまくるって、上品なものから下品なものまで全身全霊を使ってアドリブかと思わせるような、しかも精度の高い身体能力で劇場中を笑いの渦に誘ってくれる。 まずはご挨拶代わりに笹野高史の超一流の下ネタからスタートした(汗) 何をしたかってことは、さすがに書けない(笑) 楽屋落ちも連発。 勘三郎は長男の勘太郎に親としてのダメ出しを連発。 橋之助には「三田寛子」口撃。 お客さんにも様々な口撃(笑) とにかく、いまやれる精一杯のアイディアを随所に盛り込んでお客さんを楽しませてくれた。 何故か、「燃えよドラゴンズ」の大合唱もあり、いまこの瞬間、この場所で、(昔の歌舞伎という様式を使った)いまの芝居をしっかりとお客さんと空間を共有して作っているって言う心意気がひしひしと伝わって来た。 演出的には、いろんな場所から役者を登場させたり、舞台奥の壁を取り払って、名古屋城の石垣をバックにしたりして、この場所でしか出来ないことをたくさんやってみせてくれた。 最後の桜吹雪に至る過程は圧巻だった。 その度に観客からは歓声が上がり、拍手が起き、涙が溢れ、本当に芝居ってこんな風に作って行くもんなんだぜぇというところを、余すところなく見せてくれた超一流のエンターテイメント作品だった。
お話的には、3時間の芝居ではあるけれど、とても単純な物語だ。 主人公の法界坊がお宝と女をゲットするために、ありとあらゆる手段を講じて手に入れようとするが上手くいかず、恋敵やお宝を管理する人たちを次々と惨殺する。 しかし、正義の味方が現れ、法界坊は命を落とすが、後に亡霊となって現れ、もういちど女をこの手に収めようと攻撃を仕掛けるも、菩薩像とお宝の力で退散させられるという話だ。 いまで言うところの私利私欲のために起こした猟奇殺人事件だ。
でも、このハチャメチャな法界坊を見ていると、気がついたら感情移入しながら見ている自分がいた。 もちろんオイラは女のために恋敵を殺したりしないし、人のお宝を持ってこうなんて言うことを日常的に思っているわけではない。 だけど、とても深層の部分では誰しも持っている私利私欲だったりするんじゃないかなと。 例えば好きな女の子(あるいは手に入れたいアイテム)がいれば、自分の良心や法律の範囲内で収まる手段であれば、ありとあらゆる方法で、その女の子の心をゲットしようとすると思う。 一度は恋に破れたとしても、もう一度這い上がって、また幸せをつかもうと努力をする。 でも人に迷惑をかけちゃいけないし、法律や常識や良心を侵してもいけない。 それは分かっているから、こうした舞台上の非日常の世界の主人公に感情移入をして、自分が出来なかったことを疑似体験させてくれてるんだなあと感じたし、一番最後の場面で、ものすごい桜吹雪の中、法界坊が退散するシーンを見て、感情移入している分、何故か自分も救われたような気になった。 何だか分からないけれど、グッと熱いものがこみ上げて来る感覚があった。 ここんとこ、いろんな出来事が重なっているが、本当にスッキリした。
見終わって、とにかくいいものを見ることが出来たなぁと、一緒にいた芝居仲間と語ることが出来た。 明日からまた元気に仕事にいけるような、そんな気がする。
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