THOKOの日々

2015年10月29日(木)

「どうしてなの?私には権利がないって言うの?あの人とずっと暮らしてきたのは私なのに!」
呼吸困難で緊急入院してきた患者に付き添ってきた女性がステーションでそう叫んだ
グリーフケア看護師と臨床心理士が個室で5時間話を聞いた
要約すると、その患者には50年以上も会っていない戸籍上の妻が存在
付き添いの女性はいわゆる内縁関係にある人だった
師長、部長、副院長も含めて会議が開かれた
結果、戸籍上の妻に連絡することになり
患者もそれに不服そうだが同意
内縁の人がそれを受けてステーションに前のめりになってきた状況での言葉だった

連絡の取れた戸籍上の妻はこう言った
「何がなんでも離婚なんてしてやりません。明日そちらにうかがいますから、その女には来ないように言ってください。妻は私ですから。」
離婚の事はこちらには関係ないが、まくしたてるように電話口で声を荒げていたそうな
その女性と妻が対峙する事はついぞないまま患者は他界した
看取ったのは戸籍上の妻
「やっと帰って来てくれたのね。」
患者が空へ旅立った日妻はそう口にして、患者を連れて帰って行った
夫婦の間に何があったのかは知りようもない
だけど、妻が病院に通うようになってから
面会ギリギリの時間に内縁の人は毎日来て、愛おしそうに患者の手を撫でていた
返事をすることもできなくなっていく患者を前に、おそらく看取れない事も想定していただろう
戸籍上の妻よりも長く共に暮らしてきたのに、それで良かったんだろうか


 < 過去  INDEX  未来 >


THOKO