「どうしてなの?私には権利がないって言うの?あの人とずっと暮らしてきたのは私なのに!」 呼吸困難で緊急入院してきた患者に付き添ってきた女性がステーションでそう叫んだ グリーフケア看護師と臨床心理士が個室で5時間話を聞いた 要約すると、その患者には50年以上も会っていない戸籍上の妻が存在 付き添いの女性はいわゆる内縁関係にある人だった 師長、部長、副院長も含めて会議が開かれた 結果、戸籍上の妻に連絡することになり 患者もそれに不服そうだが同意 内縁の人がそれを受けてステーションに前のめりになってきた状況での言葉だった
連絡の取れた戸籍上の妻はこう言った 「何がなんでも離婚なんてしてやりません。明日そちらにうかがいますから、その女には来ないように言ってください。妻は私ですから。」 離婚の事はこちらには関係ないが、まくしたてるように電話口で声を荒げていたそうな その女性と妻が対峙する事はついぞないまま患者は他界した 看取ったのは戸籍上の妻 「やっと帰って来てくれたのね。」 患者が空へ旅立った日妻はそう口にして、患者を連れて帰って行った 夫婦の間に何があったのかは知りようもない だけど、妻が病院に通うようになってから 面会ギリギリの時間に内縁の人は毎日来て、愛おしそうに患者の手を撫でていた 返事をすることもできなくなっていく患者を前に、おそらく看取れない事も想定していただろう 戸籍上の妻よりも長く共に暮らしてきたのに、それで良かったんだろうか
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