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北岳報告・登頂



山の夜明け


大音量であたりを揺るがすいびきの二重奏に悩まされつつも、なんとか眠れてはいたらしく、人の起き出す気配に布団の中で時計を確認してみると、時刻は午前3:00。ザックと一緒に小屋の外に出て、身支度などを整えます。

とはいえ山中の外気温はとても低く、とてもじゃありませんが、氷のような水に手をひたして顔を洗う気にはなれませんでした。震えながらパッキングをしていると、ガイドさんがあたたかいお茶を分けてくださいました。あぁ、山の上で火が使えるってとってもうらやましいです。

必要のない荷物を小屋にデポして、出発したのは午前4:00。
ヘッドライトで足元をてらしながらの道行きとなりました。しばらく歩くとだんだんと体もあたたまり、白々と夜もあけてきます。朝焼けに染まる北岳をながめつつ、大樺沢二股にたどり着くと、雪渓を左手に、雄大な北岳バットレスの姿を右手に見ながら、もくもくと歩みを進めます。

八本歯のコルに向かうためには雪渓を渡らなければならず、軽アイゼンと格闘というワンシーンもありました。

八本歯にかかる梯子を次から次にこなしているうち、気がつけば、やがて稜線へと飛び出していました。お花の咲き乱れる斜面と、雄大な間ノ岳の山容が、急な登りに緊張がちだった気持ちを溶かしてくれましたよ。

ここで、少し長めの休憩。今回のお目当ての「キタダケソウ」を捜し求めますが、咲き誇っているのはハクサンイチゲの白ばかり。もう少し上に登った方が見つけやすいかもしれないということで、もうただひたすら斜面を登っていきます。

ここまで来るとさすがに酸素が薄く、酸欠のきんぎょのようにぱくぱくと空気を求めてしまうのですが、そんなつらさよりも、徐々に高度感を増してゆく光景を目の当たりに出来ることのほうが数倍嬉しいんです。

やがて北岳山荘への分岐点に到達。タカムラー的には、やはり「マークスの山」から下記の描写を抜粋しなければです。

稜線の吊尾根分岐に立ったのは午前6時半だった。左へ進んで山荘方向の縦走路へ向かうか、右へ進んで北岳の山頂へ登ってみるか、「どっちにしますか」と戸部が尋ねた。
合田は「上へ登ろう」と答えた。もし滑落などの事故にあっていなければ、水沢は頂上を目指したに違いないと合田は信じた。「マークスの山」単行本P438より

そんなわけで、私達も、もうあと一踏ん張り。山頂がすぐそこに見えているんです。このころには、空気の薄さもちっとも気にならなかったような気がします。だって、憧れ続けたあの山頂を、もうほんの少しで踏むことが出来るんですよ!!!

そして、10:20AM、とうとう山頂到着!富士山が目の前に!!!
着いたよ〜、やったよ〜(感涙)
展望は360度。どこをどう眺めても素敵な光景が広がります。以下はまた抜粋です。

無線が飛び交った。「発見!水沢を発見!北岳山頂。死亡」
「マークスの山」単行本P439より



じーんと、胸に迫るものがあります。ここで、水沢は……

山頂でゆっくりと「マークスの山」の世界に浸っていたいのはやまやまだったのですが、お山というのは、登ったからには降りなくてはなりません(涙)

時間はおしているのです。17:00迄に、とにかく下山して広河原を出なければなりません。そんなわけで、後ろ髪をひかれる思いで、山頂を後にすることに……

きっとまたいつか、この山頂に立ってやるさ!
感傷には、その時にまたゆっくり浸ってやるさ、ってことで、とにかく今は、急ぐんだ、下山を!!!

2004年08月03日(火)
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