かえるの日記&雑談

2003年03月22日(土) ぷちねた:亜細亜の夜の青い鳥

指輪の同人系サイト巡りをしていたら(最近こればっか)BBSや日記に、ちょこっと妄想トークやワンシーンSSを書いているところがあった。
ふっつーの日記のつもりで流し読みしてたのでちょっとお得な気分。それに書くほうも正式な更新より気楽でいーかもと思い、ちょっと真似してみる。

***
「僕は出かけないよ。あんたはお好きにどうぞ」
 ホテルのソファにどっかり足を組んで、イリヤはそう言った。
 泥と虫まみれになりながら二週間を過ごしたジャングルから這い出て、ようやく辿り付いた人の住む町。指定のホテルは予想外に上等で、ついでにブッキングのミスでスタンダード・ツインから追加料金無しでスィートルームに入れてもらえることになった。
 高層階の窓からは、遠くには黒々としたジャングルがうずくまっているが、すぐ目の下は極彩色のネオンのまたたきに車のヘッドライトの流れ。ソロが早速命の洗濯をと勇みこむのも無理はない。
「ようやく屋根と壁のあるところに落ち着けたんだ。また外をウロチョロするのはごめんだね」
 イリヤは鞄の底から、汚れた分厚いペーパーバックを取り出した。取り付く島なし、と判断し、ソロは肩をすくめる。
「わかったわかった。無理にとは言わない」
「ありがたいね。あとは明日の飛行機の時間までに戻ってくるなら、多少ハメを外しても黙ってやるよ」

 ソロがドアを開けて出て行くのを耳の端で聞いて、イリヤはふっと息をついた。任務の後で一息つきたいのはどちらも同じ、そのやりかたが全く違うのはどうしようもないことだ。それにこれで何にも邪魔されず、ゆっくりと読みかけの本が読める。
 ぱらぱらと本のページをめくりながら、相棒の気配をどこかで感じているのが本当は一番落ち着く時の過ごし方なのだが、そこまで贅沢を言っても始まらない…。

 数センテンスも読み終わらないうちに、ソロが再び戻ってきた。顔を上げると、ホテルのブティックの紙袋をいくつか手に下げている。
「下の店にいいドレスシャツがあってねえ。ジャワ更紗って上等の生地で、君向けにノータイでもいいんだとさ。安くしてやるっていうから、君のぶんまで買っちまった」
「……ああ、そりゃ、どうも」
「さて着替えようかな。この汗じみた背広はもう限界だ!」

 賑やかにまくしたてながらバスルームの扉を開く。勢いよく流れ出すシャワーの音。身体を洗い、髪を洗い、髭を剃って、清潔な衣類に着替え、髪を整えてお気に入りのコロンを振って…ナポレオン=ソロの厳粛なセレモニーだ。
 ほどなく姿を現したソロは一部の隙も無い男振りで、イリヤを半ば呆れさせ半ば感心させられ、その両方ですっかり彼の目を奪ってしまっていた。
 本を膝の上に置きっぱなしにしてじっと視線を注ぐイリヤに、ソロはいっこう出かける気配を見せない。

「羽根を伸ばしに行くんだろ?こんな口止め料なんか必要ないから…」
「いやあ、」
 優雅な足取りで、ソロが反対側のソファに近づき、ゆったりと腰を下ろした。窓の外に広がる異国の夜景を一瞥する。
「青い鳥はいつも家の中にいるんだって気がついたのさ」
 にっこり笑って、机の上の受話器を上げ、ルームサービスのボタンを押す。
「スコッチか、何かカクテルでも頼んでみようかな。君は?」
「…ヌードルと鶏の串焼き、それにウォッカ、無かったらビール」
 早口に言いながらイリヤは、シャツの包みを片手にそそくさとバスルームに向かった。

〜おしまい


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