野生の森
高瀬志穂



 Primary にょ


 この顔があまり好きではなかった。自分自身もあまり好きではなかった。
 見た目だけで知らない男の人が近づいてきた。それが嫌で仕方なかった。だからそれを隠した。厚いレンズで。そして伸ばした髪を左右で編んだ。
「今日は…いないかな。」
 鞄を抱え、曲がり角から向こうをみる。誰もいないことを確認して一歩踏み出そうとしたのだが、後ろから話し掛けられた。
「ヤマトさん、今帰り?」
 振り返りたくない。けれどこの至近距離で名前を呼ばれ、無視をするわけにもいかなかった。キラはゆっくりと振り返り、声をかけてきた人物を視界にいれた。
「はい、そうです…ザラ君も?」
 そこにいた人物はキラに対してにっこりと微笑んでいた。この笑顔が何人、いや何十人という女の子を虜にしているのであろう。確かにかっこいいとは思う。他の男の子の中で群を抜いている。けれどこの笑顔がキラは恐くて仕方なかった。なにもかも見透かしているかのような笑顔が。
「そう。で、一緒に帰りたいなと思って。」
「え…。」
 普通の女の子ならそんなことを言われたら嬉しくて仕方ないだろう。しかしキラは正直困った。どうしていいのかわからないのだから。
 首を横に振る理由もすぐには思い付かず、だからと言ってすぐに縦に振ることも出来なかった。
「キラはまだこんな眼鏡してるの?」
 どうしようと考えていると眼鏡をするりと外された。それに気付いて取り返そうとするのだがアスランの方が一枚も二枚も上手であった。
「ちょっ…ザラ君!?」
「アスランでいいって言っただろ?それにキラは眼鏡しない方が可愛いのに。」
 アスランは眼鏡とキラを交互に見た。一方のキラは俯き、小さく口を開いた。
「それは…その…とにかく返してよ。」
「わかったよ。キラの嫌がることはしないよ。」
 と、アスランは素直にキラに眼鏡を返した。返された眼鏡をすぐにしてキラはとことこと歩きだした。その後をアスランは追った。
「…ねぇアスラン君はどうして僕なんかに…構うの?」
 まわりの女の子の視線が痛い。目を引くアスランに引き寄せられそのまま隣のキラへと視線が動く。その動いた時が嫌なのだ。
「キラを近くで見たいから。それは理由にならない?」
 そう言って歩いている最中に顔を覗きこまれた。その端正な顔がキラの視界いっぱいに現れ、キラの鼓動は早くなった。あまりにも顔が近くなり唇がくっつきそうになると、キラは反射的に身体を後ろにと引いた。
 アスランがキラをこんな風に追い掛けている理由がキラには分からなかった。ただからかっているのか、誰かと賭でもしているのか。
 自分自身が嫌いだと思っている人間に興味があるというのが、キラには信じられなかった。
「…僕なんかより可愛い子ならたくさんいるじゃないか。」
 アスランに寄ってくる子は可愛らしい子やら魅惑的な女性やら様々である。
「俺はキラに興味があるんだけど。」
 けれどアスランはキラの言葉を無視し、そう言った。その言葉にキラはただただ呆れるしか無かった。
 一体彼はキラのどこがいいと思ってそんなことを言っているのか、キラ自身には分からなかったから。
「…そう、ですか。」
「信じてないだろ。ま、いいけどさ。キラは俺のこと嫌い?」
「え、あ…。」
 とっさのことで、キラはうまく言い返すことが出来ず、口籠った。
 嫌いというより苦手意識が強い。好き嫌いを判断出来る距離ではない。
「けれど俺はキラが好きだから。覚えておいて。」
「え?」
 あまりにも突然で、あまりにも真剣なアスランの声に、キラは思わず声をあげる。そしてアスランの顔を見た。
「本気だから。」
 その顔は言葉通り真剣なものだった。本気なのか演じているのかは分からないけれどどきりとし、その威圧感に押されそうになった。
 それと同時にさらに心が痛くなる。大きく脈打って、中からも外からも締め付けられる感覚に襲われた。
「なんで僕なんか…。」
 アスランのまっすぐな瞳からキラは目をそらした。多分この目が苦手なんだろうなと思いながら。
 心の中まですべて読み取られてしまうのでは無いかと思う程きれいな緑色の瞳。そのエメラルドのようなものは確かにきれいだ。けれどきれい過ぎてキラは同時に恐くも感じた。



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 こんな感じですが・・・分からないですよね。
まぁ雰囲気はこんな感じ。

2005年08月21日(日)
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