当世高校教師気質
一生勉強 一生青春

2002年12月20日(金) 『神様のボート』

2日間大学に行っていなかったので久々に研究室に立ち寄ると、
なんだかとーっても嫌な予感がする雑誌が置いてあった。
おそるおそる手に取ってみると、ズバリ!
『曽我物語の作品宇宙』・・・うそぉぉぉん(涙)
まるまる1冊『曽我物語』論文が掲載されている特集号。
そりゃ修論書き始めの頃だったら嬉しかったが、
もう締め切りまで20日しか残っていない時期にこれはないよ。
しかもそれをわざわざ研究室に入れてくれる教授がニクイ。
参考文献に載っていなかったら何を言われるか分からない。
とりあえず今日はガシガシ読んで一日が終わった。
どうも内容でかぶったりするようなことはないみたいなので、
ひとまず安心。でも、心臓に悪いってば、ホント。

本日の一作:
・『神様のボート』(江國香織/新潮文庫)

久しぶりにまともな本を読んだ。
必ず探し出すという恋人の約束だけを頼りに、
ふらふらと街から街へ引越しつづける葉子と娘の草子の物語。
江國女史の書く登場人物はいつも輪郭がぼんやりしているのだが、
葉子は際立ってつかみ所のない水のような女性。
一方で、草子は成長するにしたがってリアリストに変化していく。
(リアリスト? いや、一般人というべきかな)
仲の良かった親子が娘の自立とともに離れてしまい、
唯一、恋人と自分とつなぐ支えであった娘を失った葉子は
ますますその輪郭を失って、空気に溶けていく。
はっきり言って、怖い。作者当人が言うのだから間違いない。

思い出すのは「井筒」や「松風」・・・要は狂女物なのだ。
もう逢う事はできないであろう恋人、現に傍にはいない恋人を
恋い慕うあまり、現実と空想の境界線がなくなっていく女性達。
でも、空想に浸っている彼女達は誰が何を言おうと幸福なのだ。
だから、「井筒」も「松風」もシテは成仏しない。
成仏する必要がないのだ、と我が教授はおっしゃった。
すると、葉子も幸福だったのだろう、夢の世界にいる限りは。


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葉明 [MAIL] [当世高校教師気質��]

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