2002年01月18日(金)  歳末特別警戒スペシャルの裏側〜こんなことがあったんじゃなかろうか〜

「こちらが同期の相原くん」
「相原、です」

友子に促され、彼は少し緊張気味の様子で軽い会釈をした。あたしはとびきりの笑顔と作り声でそれに答える。

「どうもー、恩田ですぅ」

こんな声、普段なら絶対出さない。でも初対面の印象というのは、大事なのだ。だからいつもひっつめてる髪も下ろしたし、メイクも柔らかめにしてきた。あたしの素顔を知ったら普通の男はまず寄り付かないということを、経験上知っていたから。

180は悠にあると思われる彼を、上目遣いに見上げる。
顔も悪くない・・・どころか、相当いい。別に面食いっていう訳じゃないから、これは客観的な評価。
彼はあたしと目が合うと、照れたように微笑んだ。
ごく普通の縁なしの眼鏡が、よく似合っている。「オレ慌て者で、すぐコンタクト落としちゃうから」そう言って緩くパーマのかかった焦茶の髪を恥ずかしそうに掻く仕草は、狙ってるんじゃないかと思えるほど好感が持てた。
同じ眼鏡でも、人によってこうも印象が違うとは。
うちのバカ上司の面々が浮かびそうになって、頭をぶるんと振る。・・・やだやだ、オフにあんなもん思い出したくない。

「あの・・・恩田さんはスチュワーデスをされてるって聞いたんですけど」
「あ、ええっ。もぉいっつも急がしくてぇー」
「そうなんですか・・・大変ですよね」
「ま・・・まぁ〜」
「でも凄いな、世界中を飛び回ってるわけでしょ?」

・・・あまりに素直に感心されるので、良心が痛んだ。

本当は、あたしはスッチーでも何でもない。
公務員。
しかも警察。
さらに刑事課。
何を隠そう、コンパで敬遠される職業第一位である。
だからこういう時、自分の職業だけは絶対に明かさない。それだったら実年齢を言った方がマシ。
友子には「紹介してくれるなら、刑事やってるなんてこと絶対に言わないでね!」と前々から念を押してあった。

その甲斐あってか、数時間後のあたしたちは結構いい雰囲気で別れたと思う。

「あの・・・今度、映画にでも行きませんか?」
「はい、是非ーっ」


これが、2ヶ月前の出来事。


その間に、青島くんが湾岸署に帰ってきて。
色んな課をたらい回しにされて。


あたしは結局、まだ一度もデートをしていない。












ドラマもフィクションですがこれもフィクションです。
というかいつのネタよ・・・歳末って何年前の歳末よ・・・。笑。
あの頃はまだ伊藤秀明を知らなくて。この前友人に借りたビデオを見て驚きましたよ。古田新太まで出てるし。


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cerri ■