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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
「なんで、ハルがそう言うんだ?」 「それはね、君のお兄さんが原因なんだよ」 「兄貴が? まあ、そうだろうな」 冬季は春季の悪行もろもろを知っている。山田工学の生徒に、例えば恨まれているならそれ相応のことをしたのだろう、晴仁が困ったような顔をしていたので冬季はそれ以上聞けなかったがおおよそ想像がつく。プレイボーイだった兄。しかしどういうわけかそこから男色の道に走った変態兄。だから捨てられた女と身近な関係が山田工学にいるのだろう。 「だから冬季は逃げてね。あいつらは、山田工学の生徒は何をするかわからない。まさか校舎の中にまで入ってくると思わなかったから」 「わかったって。心配するなよ。俺、逃げ足は速いから」 逃げ足でなくても速い自信はある。それを一番良く知っている晴仁にそう言って安心させた。 ある日の放課後、帰る時に都合悪く誰もいなかった。上田も会議があると抜け出せなかったのだ。そんな折に岡崎秀介が通りかかった。 「あれ? お前たち帰らないのか?」 「岡崎さん」 すごい都合のいいところで来たと冬季は思った。 「岡崎さん! 実は……」 「ああ、そうだ。ちょっと窓口の野田君に話があるんだ。一緒にそこまで来てくれるかな?」 秀介はそう言ってにこやかに笑った。冬季は首をかしげる。ちょっと前の秀介はどこか暗く何かに悩んでいる様子だったのだが、今はそれが吹っ切れたように見える。 「君も、ね。冬季君」 「あ……はい」 冬季にとっては複雑だった。岡崎秀介は兄の思い人である。兄を男色の道に走らせた張本人。だが、秀介が悪いわけじゃないことは確かである。兄が一番迷惑かけている人なのだ。 「じゃあ、行こうか。ああ、そうそう家まで送って行くよ。その間に話が済むからね」
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