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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
これで『愛でる会』編終了です。一週間くらいでケリがつく話、いいなー。こんくらいが楽。来週一週間くらいなんもやらんでもいいかもなー。 田中学院 大学部2年 岡崎秀介。 春季が気づいたのはベッドの上だった。 「おー、気づいたな。おい、大丈夫か? 自分のこと分かるか?」 そう声を掛けるのは上田明。ここが高等部の保健室ということがわかる。 「なんで?上田先生?」 「体育館裏からならここの方が近いから」 秀介もカーテンから顔をのぞかせた。 「ええーと、何だっけ? どうして俺寝てたんだっけ?」 「それより、ごめんな、春季」 「はあ? なんで秀介が謝るんだ?」 「いや、待ち合わせしていることすっかり忘れていたから」 「そういえば秀介、お前......大丈夫だな。それどころか......」 「うん、だから今日は屯田軒で好きなの食べろ。一杯分だけおごってやる。いいですよね? 上田先生」 「まあ中野くんなら大丈夫だね。それよりも、君に麻酔薬が効くなんて驚きだよ」 「ああ、なんかゾウに使うやつらしいです」 「なるほどねー」 『愛でる会』の気配はウソのように消えていた。あの腕を折ってしまったメンバーの一人に伝えたのは、東可奈の封印を解くことのみだ。彼女のことだから何らかの方法で自力で封印を解いたかもしれないが。それ以外はやってもらうことが出来ない。せいぜいもう付きまとうのはやめろとしか言えなかった。それも目的を果たしたのだから必要なくなった。 『今まで甘えた分のツケが俺にきたわけだ』 「どした?」 「なんでもなーい」 屯田軒へ向かい、愛想のいい店主に「秀ちゃん、今日は顔色いいね!」などと言われる。この店主は田学のほとんどの生徒を把握しているんじゃないかと時々思うが詮索しない事にしている。 「おやじ、チャーシュー麺味噌大盛りで替え玉大盛り3つ用意してくれ」 「おやじ、その大盛りのみ俺の勘定に入れて、替え玉3つは春季の勘定にしてくれ。ちなみに俺はチャーシュー麺醤油で」 「はいよー」 その夜は良介と兄にケーキを買って行った。さすがに部屋で養生しているかと思ったが、じいさんの稽古を見ていたという。なので夕飯後に部屋へ持って行った。 「あれ? 秀兄」 察しの良い良介はすぐに気づいた。だから、いつも助けられている。 「これ可奈ちゃんオススメカフェ店のケーキ」 「ありがとう。へえー今度綾名と行ってみようかな」 「おう、女の子が好きそうなかわいい店だった」 「そう。可奈ちゃんと一緒に行って来たんだ」 「まあ、中学生が一人で入れるような店じゃないから......。ほら、兄妹ってことなら」 「そうだよね。それにしても秀兄、どうするの?」 そうだ、この弟は気づいている。 「もちろん、尻拭いは自分でやるよ」 そして兄にも顔を見せる。その夜夜遅く帰ってきたので、待っていた。この兄は自分で気づかない振りをして、ちゃんとわかっているクセ者だった。 「お帰り、兄貴」 「おう、秀、珍しい。どうした?」 「ケーキ買って来た」 「ますます、なんかあったのか?」 「うん、まあ、お祝い。お裾分けみたいなもん」 「お前、かわいい店とか好きだよなぁ」 「明日、理事長と話すよ」 「......そうか」 「じゃ、お休み」 部屋を出る前に、優介は『今度兄弟三人で久しぶりにバカやりに行くか』と誘った。 翌朝、理事長に会った。 「すみません、朝早くに」 「岡崎秀介くん、上田先生から聞いたよ」 「はい、実はお願いがありまして」 「なんだね?」 「まずは、野田晴仁が受けている依頼『“愛でる会”メンバーの割り出す』というのを取り消してください。捜査費料等は俺が立て替えます。そして俺が引き継ぎます」 「つまり、シンクタンクに復帰するということかな?」 「ええ、それを許してくれるなら」 「そうか。なら野田くんから直接引き継いでくれ。野田くんもしっぽを掴んでいるらしいが確証できないって言って教えてくれないんだよ」 『真面目過ぎだよね、彼』と理事長は苦笑いをする。しかし彼が窓口となっているのはその慎重さゆえである。 「わかりました、理事長。ありがとうございます」 「ところで、どうやって戻れたの?」 「みんなのお陰です。特に『愛でる会』のお陰なので、お礼をしないと。自分が撒いているタネなので、自分が摘み取ります」 秀介はそう言って、笑顔を見せた。それはさわやかにも見える。 「そうかい。お帰り、岡崎くん」 「はい、また、お願いします」
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