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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
自作二大話の登場人物を書き出したら、恥ずかしくなった。 田中学院 中等部 2年 東 可奈。 おおよそ同じ年代のキャピキャピという謎の形容詞が似合わない女子である。学校での生活は大人しく、休み時間はいつも座って本を読んでいるという具合だが、同じクラスの高山貴乃と一緒に昼食を摂ったりと一緒に行動していることも多い。 そんな彼女が貴乃とともに入部しているのが、オカルト研究部通称オカ研だった。そして、彼女のそばに蝙蝠が飛んでいた、クロネコが付いて歩いていた、カラスがいつも見守っているなどの噂などで、魔女ではないかなどの噂が絶えない。実際彼女が得体のしれないオブジェを持っていたのを見かけた生徒がいる。そんな生徒たちの言葉に彼女は公定も否定もしなかったゆえに、噂は噂を呼び一層謎めいている。 当の本人は全く気にせず今日もオカルト研究部の扉を開いた。 「やあ、可奈ちゃん」 「部長、こんにちは」 空き教室の半分のスペースであるこの部室にはいつも三人しか集まらない。部長である岡崎良介は校内でも数多い中の変人の一人であるが、基本、人が良い。 「今日は貴乃ちゃんはお休みです。おうちのお手伝いがあるからって」 「そう」 気にせずに彼は何か調べ物をしている。基本的にこの部活は毎月一度降霊会を開き、あとは夏場お化け屋敷を開業する、年に一度大規模な肝試し大会を行うくらいだった。毎月一度の降霊会も良介に原初の魔「エゴイズム」が取り憑いてからというもの、可奈が禁止命令を出した。 この「エゴイズム」は結局自分が一番かわいいとかいうものであり、世界の人々が某救世主並みに自己を犠牲にし人のために善行を行わない限り消えないという、絶対に消えることのないすごい魔なのだが、取り憑いたからといって特に何もしない。 「部長、最近魔はどうですか?」 可奈の問いに良介は「特に何も変わらないよ」と首をあげた。 「そうですか」 彼女は特に心配もしていなかったが、彼女もこんな魔に会うのは初めてなので今後どうなるかわからない。今も今後何があってもきっと何もできないだろうと思っている。 「あのう、部長、秀介さん、元気ですか?」 「うん、相変わらずかなー……えーと、今日はそろそろ授業終わるころだと思うよ」 良介は彼女の心を知ってか知らずか、否、知っているからゆえ知らないふりで答えた。恋する乙女の心を触れずに支える術をこの変人はなぜか会得している。 「部長、急に用事を思い出しました」 「はーい、俺はもう少し残るからいいよー」 「はい、さようならー」 田中学院 大学部2年 岡崎秀介。いつもぼんやり大学へ行き授業を受け帰宅する。そんな毎日の繰り返しだった。今の彼に気力というものがやや抜け落ちていた。高等部時の事件でなんらかの心に深い傷を負った(失恋という可能性が大)ゆえに、無気力な大学生となっている。本人もこのままではダメだと思っているが、なかなかそれから抜け出せずにいる(ため、失恋ではないのではという見解もある)。そんな秀介を良介は勘を利かせて厳しい祖父から守り、さらに家族でも鈍感な兄優介にそっと伝え、名の通り優しき兄によって秀介を守らせるという二重防衛を行っている。そのことはとっくに秀介は気づいているが、そこに甘えているので兄弟に感謝している。 「おーい、秀介」 帰ろうと校門へ向かう途中、春季に会った。中野春季。学校でも様々な理由で有名な中野兄弟長男。彼とは長い友人関係にある。高等部時代に気力を失った彼を見守ったのは他人で春季くらいだった。今でもあまり人付き合いしなくなった秀介に声をかけるのも春季くらいである。 「帰るのか? なあ、屯田軒寄ってこーぜ」 「いいけど、お前、食いすぎなんだよ」 中野兄弟の特徴、その一、大食い。春季はその中でも小食の方だった。あくまで妹弟に比べての話だが。中野家の特徴で、大人になるにつれ、食欲は治まっていくらしい。ただし、中野家の常識は世間の非常識である。ちなみに屯田軒はこの近所のラーメン屋。安くおいしいため田学生たちも多くが通う。店主も生徒たちに愛想がいい。 「秀介さん、こんにちは」 可奈が駆け付けた。 「あ、可奈ちゃん。こんにちは。どうしたの?」 魔女だなんだという噂は大学部にも届いているが、弟の後輩ということで何かと顔を合わせる機会があるためこの少女に対しては警戒も何もなかった。気力落ちしている彼にとって噂などよほど信憑性がない限り入ってこない。 「あの、実は秀介さんが好きそうなかわいいお店を見つけたんです」 「かわいい……」 春季が「うわあ」という顔をする。可奈は秀介の好みを心得ている。 「じゃあ、そういうことで。春季は一人で屯田軒な」 「へいへい、俺は一人さびしくラーメンすするから」 そう言いつつも校門まで三人で向かう。 「あ、可奈ちゃん。髪に糸くずが付いてる」 春季が可奈の肩にそっと手を乗せる。 「あら、さすが元プレイボーイ」 「まあね。あ、俺、ちょっと忘れ物」 春季は校門前で止まった。 「ああ、じゃあな」 秀介を手を挙げた。そして可奈はちょっとだけ頭を下げた。二人が見えなくなると、春季は振り返った。 「なんか用だったか? うちの秀介に」 『ちっ』 『また中野春季かっ!』 『とてもじゃないけど、かないっこないわ』 『あの魔女も変な術使ったのね、急に見失った』 そんな声が聞こえる。春季も良く知らないが、どういうわけか秀介はよくわからないもの(変態ともいう)を惹きつける。『岡崎秀介を愛でる会』なるものがある。あの東可奈や田学のシンクタンクである野田晴仁ですら把握できない謎の集団。他校にも及んでいるのかもしれない。 可奈の肩に触れたのは彼らがいる合図。可奈はそれに応じて呪い(まじない)を使ったのだ。 「秀介が元に戻ったら、捻りつぶされるぞ」 そんな捨て台詞を吐いて春季は一人さびしく屯田軒に向かった。
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