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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
の、前に。 一歳になったばかりのシンリンオオカミのルーク。前日の仔狼たちのお兄ちゃんです。片目の色が違うのは光の加減ではありません、本当に違います。 冬毛が抜けてすっきりしています。 「ハチさん、あたしちょっと出かけてくるよ」 寝る前にドッツェは言った。昼間よりも生き生きとしている。 「気をつけろよ」 「うん、いざとなったら猫になって逃げるよ」 スラム暮らしだったドッツェは昼よりも夜に活動する事の方が多かったらしく、更にこの世界に来て猫に姿を変える事が出来るようになった事もあり、余計夜の方が元気になったようだ。 八郎には少女が何をしに行くのかはわからない。朝には小銭を握って眠っているところを見れば、何かしらのアルバイトだろう。それも子どものお小遣い程度のお金なのだから、この少女にしか出来ない、猫としてのバイト。身を売ればこの程度の金ではすまない、そう思って黙っている。そして目覚めれば、握った小銭を大事そうに八郎が空き箱で作った貯金箱に入れていたのでことさら黙っていた。 「じゃ、行ってきます」 「おう、気を付けてな」 少女を見送って彼は眠る事にする。明日は仕事が入りそうな予感がしていた。 ドッツェは今夜『おふくろ会』に呼ばれていた。 『おふくろ会』とはその名の通り、夫と子どもがいる母親たちの会だった。 「うちの亭主、今日もあの店で飲んだくれているんだよ」 「あら、うちのもよ」 などと口々に愚痴る母親たち。 「ドッツェちゃん、うちの旦那、明日は早い仕事があるっていうんだ。悪いけど、連れ戻してくれないかい?」 一人がそう言って、小銭を握らせた。他の母親たちからも頼まれる。 「うん、わかった」 そう言って、酒場街へと走って行った。 夜目の利くドッツェにとって、明かりの少ない酒場街へ行くのにランタンは必要なかった。暗い酒場の店内でも顔を見分ける事が出来た。 少女が「帰ろう」と言えば、男たちも帰らざるを得ない。それだけ少女の笑顔は可愛かった。
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