|
気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
また初めて見るとする。 ファンタジー世界、何でもありのご都合主義世界。ここもそんな世界の一つ。種族のるつぼと言われる世界三大都市の一つのウルラ。その大通りから二本外れた裏通りのアパートの二階にそれはあった。『柴山八郎探偵事務所』と手書きで書かれた看板がドアに取り付けられている。 ドアの奥はディスクと椅子一組とソファーが一脚、観葉植物一植えが枯れずに頑張っている。椅子には眉間に皺をよせた男、柴山八郎がディスクに肘を付き組んだ手の上に顎を乗せて座っている。 ソファーには客と言いたいところだが、ドッツェという女の子が寝転がっていた。お昼寝中で今はすやすやと眠っている。 「暇だ」 「......くー」 八郎は観葉植物に目をやる。「まだ大丈夫だ、まだ持つ」と判断して再びつぶやいた。 「暇だ」 八郎はドッツェに目をやる。涎をたらして眠っている。その口元にクリームが付いているのを見た。 「ドッツェ、てめえっ!」 「ギャッ!」 急に怒鳴られて少女は飛び上がった。 「俺のケーキ、食っただろ!」 「ば、バレた?」 「よくも俺のケーキを!」 「ご、ゴメンね、でもおいしそうだったから!」 「許さん!」 彼は少女に飛びかかった。しかし、少女はそれをひょいっとかわす。もう一度彼は飛びかかるがそれもひょいと身軽にかわした。 「ハチさん、本当にゴメンね。悪気はないんだよ、お腹がすいちゃって」 「......わかった。大人げなかった」 うるうるとした少女の目に八郎は怒りを抑えた。性格的にカッとなりやすいが冷めるのも早い。それが彼の良いところでも悪いところでもある。
|