|
気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
行こうかと。 墓場だった。 ちょうどいいと思った。 どうせ、死ぬだろう。追っ手もそう思って諦めるだろう。 短い人生だった。いや、長かったかもしれない。 気づくのは遅かったかもしれない。 でも後悔はしない。 幸い、ここは温かい。 寒く雪深い故郷を思い出したが、すぐに薄れる。ここで眠れるのであれば、それはなんて幸せなのだろう、と思う。 「姉上、人がいる」 少年は言った。葬儀のためか、喪服姿だった。少年よりも十は年上の少女は少年の指差す方を見る。 「ああ、行き倒れだな」 男のようだった。日当りの良い墓の前でうつぶせに倒れていた。 「助けよう」 少女は少し躊躇した。少年は姉の返事を待ちきれず男に近づいた。 「待て」 「もう、やだよ。お葬式なんか」 「どこの誰なのかも分からないのに」 「そんなこと言ったら、僕は国のほとんどの人は分からない、知らない人だよ」 「わかった。じゃあ、誰か呼んで来るんだ。そうだ、トルクも参列していた。トルクを連れて来るんだ。私はここで見ているから」 少年はやっとうなずいて、少女から離れた。
|