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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
行きますですよ。 高橋は夢を見ていた。 「ああ、ここが三途の川か。これって、殉職でいいのか?」 目の前に広がる綺麗な川。さらさらと流れてる。臭いもない。周りは闇で覆われていた。 「高橋! 何やっている!」 社長、宮島の声がした。はっとして目を冷ます。下水道だった。しかし、浄水器を取り付けられたのと社長の怪しい薬品により、下水は清流となっていた。 「高橋、どうした?」 「ああ、すみません、社長。社長の薬の臭いで気を失ってました」 「ああ、すまん。言い忘れていた。合成中に発生するガスは有毒だからあんまり吸うな」 「遅いです、社長」 「ま、無事で良かった」 「あんまり良くないです。あ、清掃完了です。今からそちらに戻ります」 高橋が戻ると。町長とすれ違った。高橋に気づくと町長は親しげに声をかけた。 「やあ、キミが掃除をしてくれた清掃員かね? ご苦労さん」 そう言って上機嫌で会社を出て行った。 「ただいま戻りました」 「おう、大変だったな、高橋。お前が下水の臭いで倒れたと言ったらあの町長、料金を少し上乗せしてくれたぞ」 「そうですか。それにしても、なぜ下水の掃除を?」 「ああ、趣味だそうだ」 「趣味?」 「それ以上は言わなかったが......察しはついている。アレは鯉マニアだ」 「恋マニア?」 「恋ではない、鯉だ。あの狸は下水で鯉を飼うつもりだ」 「はあ」 高橋は情けなくなった。 「町会費で清掃、会社の機器をレンタルし、町の衛生を保つ反面、自分の好きな鯉を飼う。うふふ、全くかわいい狸だ」 「で、社長は何企んでいるんですか?」 「あれだけ広い範囲で鯉を飼うのだ。一匹や二匹、頂戴しても大丈夫だろう」 「一匹や二匹で済まないでしょうね」 「それに鯉は薬品の開発に使ういい材料なんだ」 宮島は笑いが止まらない。高橋は鯉を少し可哀想に思った。ほんの少しだが。
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