井ノ本的
 written by 井ノ本R
 
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2004年09月23日(木) 井ノ本的韓流

ブームっぽい言葉でこんにちは。井ノ本です。
韓国というと学生時代バイトが一緒だった友人が韓国語を専攻していて、よく新大久保に行ってはおいしいキムチを買ってきていたことを思い出します。
そしてそのキムチをそのまんま仕事場(予備校の職員室)に置くのでたいへんなことになっていたのもよき思い出です。
漬物はどの国のものもにおうんだ、と思った若き日(たくあんだって温めたりするとたいへんだしくさやとかとんでもないしなあ)

韓流ブームらしいですね。
他人事のようですが実際他人事。
ドラマとかおかしいので見たりしますがなんかどうもぴんときません。
NHK-BSでやってる「初恋」ってドラマはペがアウトローの大学生(ここポイント)をやってておもしろいですけど。
大学生がアウトローってすごいなあ
しかもアウトローとかいってるけどバイクに乗ったりしてるだけだしなあ
いかんいかんその話じゃないのだ今日は
まあとりあえず韓流とかいうのを少しは嗜んでみようかしらあまり時流に乗れないのもなんだしな、
と思って見た映画がすごかった。
「殺人の追憶」っていうんですけど。
いやーすごい。
ほんとすごい。
見たあと3日くらい食欲がうせます。
それくらいすごい。
(以下ネタバレがありますので、未見の方はご注意を)

冒頭でネタバレしてしまうので書いちゃいますけど、
1986-1991年の間に韓国の農村で実際に起こった事件をもとにした話です。
猟奇的連続婦女暴行殺人事件。
しかも未解決。
で、その事件を追う刑事の話なんですけど。

未解決なので犯人の姿はほとんど描写されません。
なので犯行のシーンはほとんどない。
被害者すなわち死体のシーンも多くない。
手口は猟奇的ですがその猟奇性や残酷さにはあまり重きがおかれていません。
だけどすごくすごくものすごく後味が悪い。
追い詰められていく刑事たちの姿のせいかもしれません。
刑事を演じる俳優さんたちがすごいんだまた。
この映画、とにかくアップが多いんですが、アップになるたびに少しずつ表情に変化が出ているのがわかる。
ソウルから来たという刑事が最初はすかしているのに、徐々に余裕をなくし、感情に任せて突っ走っていくさまとか、
「目を見れば犯人かどうかわかる」などとうそぶいていた田舎刑事が謎に翻弄されて自信をなくしていくさまとか、
これがアップの多用で濃密なこと濃密なこと。

またすごいのがすべてが解決しないところです。
未解決事件の映画なので事件が解決しないのは予想通りなのですが、
映画の中でなんらかの決着というか結論が出そうなものがなにひとつ出ないまま終わる。
謎は謎のままだし、犯人はわからないし、
田舎の刑事と都会の刑事の心も通いあわない。
つながりそうでつながらない、もしかして、と思った瞬間すべてがゼロになってしまう。
これがなんともすごいのです。
未解決だと分かっていて見ているのに、いつのまにか解決してほしいと思って見てしまっている。
そして解決されないまま放り出されて映画はラストシーンになります。
なんともいえない喪失感と閉塞感。
で、ラストシーンの恐ろしいことといったら!
もうこれは最後まで見ないと恐ろしさがわからない。
最後の最後のセリフと最後の俳優さんの表情、
ほんの二言三言、ほんの数カットなのに怖い。
本気で怖い。
リアルすぎて怖い。

私たちが日々暮らす現実はけっこう不条理で理不尽で、解決したり結論が出たりすることのほうがまれです。
(だから映画とかでは大団円が好まれるのかもしれませんね)
この映画は不条理で理不尽なまま終わる。
だから余計自分の日常を思い出させるし、この映画で起こった事件はもしかすると自分の生活と地続きで起こりうるかもしれない、と思わせる。
思わせておいてそれ以上の情報は与えずにあっさり終わる。
ほんとに身の毛のよだつような映画です。
いやーすごい映画でした。
今回オチもネタもなく素で書いちゃいましたよ。

人に笑顔で薦めることはできませんが、ちょっとでも興味があるのなら見ておいたほうがいいと思います。

でも口直し用の映画を用意しておいたほうがいいかもしれません。
私は「バッドボーイズ」と「バッドボーイズ2バッド」を2本立て続けに見てようやくちょっと立ち直りました


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「殺人の追憶」公式サイト
http://www.cqn.co.jp/mom/

全斗煥政権下の80年代ってほんとに閉塞感があったんだなあ、と思います。
サイレンが響いて窓が閉まっていくシーンは忘れられません
あと桃しばらく食べられなかったな…

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