買ってきた空のビデオテープに何を録画しようか考えつつ、
日暮れの道を歩いていた。
あのこの家の近くに通りかかる。
その場所には高い送電線が立ち、好きな場所のひとつなんだ。

君の家の駐車スペースには車も止まっていない。きっと留守だ。
せっかくだから、こっそりと家の少し近くまで行って、
佇まいをしばし眺めた。
君はいつか、僕の夢の中で、頭をやさしくなでてくれた。
それはとても安心したものだ。
そんな日は遠目に見る君との距離のギャップに驚くけど。
でも今日はいいよ。休みだから。
空しい本当を見なくてもいい。
ぼーっとしていていいんだ。
暗くなっていく町。
君の家を後にして歩く僕。
ゆっくり時間は過ぎて。
ずっとこうやって、生きていたい。
何も強制されず。誰にも非難されず。
ぬるま湯みたいな日に、ぼーっと。ぼーっと。
今日のことも明日のことも昨日のことも自分のことも考えず。
現実を思い出しても逃げ出して、
君のことだけ考えよう。優しい君のことだけを。
それでも本当のことを思い出したなら、こころの本当とまぜて。
全部ごちゃまぜにして。
ぼーっとしよう。
部屋にたどりつく。
ベッドに横になる。
頭の細胞を眠らせて。
明日あしたアシタ…。
それはなんだっけ?
君きみキミ…。
それはなんだっけ?
空のビデオテープ。
それはいつまでも空のままだった。
それでもいいんじゃないかと思っていた。
真っ暗になって。
何も見えなくてなって。
許された気がした。