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2002年09月29日(日) 男が身体を売ること★その壱拾弐★
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公園に逆戻りした俺。
キンモクセイの香りが甘く。
そんな甘さが俺には辛いだけで。
嫌いになった。
ちょうどその頃、
公務員試験の結果が出た。
合格。
21年生きてきて、
初めての、合格。
全く勉強しなかったのに。
努力したわけではないのに。
それでも。
認められた気がして。
嬉しかった。
そして。
俺は、家に戻った。
夜だった。
自分の家なのに、
余所の人の見知らぬ家の様だった。
家には灯りがついていた。
チャイムを鳴らす。
ドアが開いた。
「何しに来たんだ?」
これが、久しぶりに会った母親が子供に言う言葉だ。
俺は、いきなり合格を告げた。
「え?受かったの?」
それまで般若の如くだった親の表情が、
一瞬、緩んだ。
「そう、受かったよ」
もう一度言った。
「受かったの!!さ、入りなさい」
親は、満面に笑顔を浮かべた。
俺は、嫌悪を露わにし、
母親を心から軽蔑した。
久しぶりの我が家。
自分で稼いで建てた家でもなくて。
なんの愛情もなく、ただ放っておかれて。
なにが我が家?
それでもいい。
眠る場所があれば。
安らげる場所を求める心の癒しよりも。
体の癒しを俺は取ったのだから・・・。
夜中。
眠れなかった。
一番馴れた場所であるはずなのに。
カチャリ。
ドアを開ける音。
忍び寄る足音。
家には、俺以外、1人しかいない。
俺は、この時マジで殺気を感じ、
身を固め、息をひそめた。
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