大正2年に刊行された長塚節の長編処女作「土」を激賞した漱石の序文に以下のような一節がある。 「土」の中に出てくる人物は、最も貧しい百姓である。教育もなければ品格もなければ、ただ土の上に生み付けられて、土とともに成長した蛆同様に憐れな百姓の生活である。長塚君は、彼等の獣類に近き、恐るべき困憊を生活状態を、一から十迄誠実に此「土」の中に収め尽くしたのである。 田圃の稲の苗を見ても米ができることを知らず子規を驚かせたこともある漱石だったからこういう人権感覚しか持ち合わせなかったのかも知れない。