stray notes

氷砂糖

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終わりのない物語でいいよ
2009年05月28日(木)

中学生の頃から読んでいた、長編小説の作家さんが亡くなった。まだ本になっていない原稿が2冊と少しあるらしいけれど、話は未完になったらしい。ずっとあとがきや闘病エッセイ、HPなどで病状は読んでいたけれど。最近はかなり苦しそうで、もしかして危ないのかな、と思っていた。それでも後に読んだ情報で、すこしでも先へ進もうと、大変な状態でも書こうとしていたことを知った。本当にありがとうございます、とせつなくなった。

わたしは、他の人の手によって、あの物語を完結させてほしいとは思いません。作品は作者のもの。あの作家さんが誰かに託した、というのであれば別ですが、あれはずっとあの作家さんが、命ある限り書きたかったものだと思うので。今後については、作家さんの意思が最も尊重されますように、と祈っています。遊び的な企画で、あの世界を好きな作家さんたちが、こういう展開もありでは、という感じで何か出るくらいはあってもいいのかもしれませんが。どうだろう……やっぱり、本家本元が一番いい、と思うんじゃないかな。すくなくとも、わたしは。

あの物語が完璧だったから、という意味ではありません。細かいところが違ったり、大きく間違っていたり、登場人物の性格が変わったり、台詞が長かったり、描写がくどかったり、伏線がはられても回収のされ方が拍子抜けだったり、うーん悪くいいたいわけではないのですが、けっこう難あり商品みたいですよね、こう書くと。でも、それを含めてあの人の作品。そしてそこには、補ってあまりあるくらいの魅力があったんですよ……(わたしには)。いい場面や言葉、生き生きした人々の姿、その世界が見えるような風物の描写などなど。あー、なんか褒めるのがうまくなくて申し訳ないですが。

読めてよかったなって思うし、これからも読み返すだろうし、まだ刊行されていない部分が印刷されて世に出るのも楽しみにしています。もちろん先が読めない、わからないのは悲しいです。でも、仕方ないなとも思うのです。それが寿命だったのなら。運命だったのなら。それに書き手のほうが、読み手よりずっと無念だったのかもしれないし……。いつまでも書いていたい、終わりのない物語を紡いでいたいと言っていた方なのだから。あの作品は、この世では終わりのないまま、が正しい気がするのです。なんとなく、他界されても、物語はあの作家さんの頭のなかで、ずっと続いてそうなイメージがあるので(だから続きをほかの人が、というのに違和感を感じるのかも)。

※あくまでこれは、数あるなかの一意見です。同じでない意見を否定するつもりで書いた文ではありません。いろいろな人がいて、いろいろな考え方・感じ方があると思います。



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