⊂おいてけの濠⊃
2002年08月23日(金)

あたしは、救われない人間かな。
それとも、救いようのない人間。
まして、人間なのかどうかさえ、定かでは無いけれど。
虚しくない?
溺れているだけよ。
おいてけノ濠、置き去りにしたのよ。
自惚れて、悲しいひと。

『きみが在なくても、僕は生きて往けるから』

あたしを何時までも、弱い生き物だと思わないで。

悲しいひと、さようなら。


⊂君我世⊃
2002年08月20日(火)

晴れきった闇空が、悲しいほど秋で。
地上五階のパノラマは、僕だけのモノになった。
光はもう摩天楼なんかじゃなくて。
線香花火みたいに、深くなるほど脆い虫。
僕はどんな罪を負った?

寂しくて寂しくて気が狂いそう。


そんな季節、好き。

またひとり。

僕から離れて逝った夜。




さようなら。


⊂井戸⊃
2002年08月18日(日)

雨が酷くて掻き混ぜられた。
泣きそう。
無傷なままでは終わらない夏休み。
得たもの分、沢山のものを失くした気がする。
きっと明日の台風で、夏はもう連れてかれるんだろう。
愛してます。

この間、友達と小学校へ行ってきた。
もう何年ぶりだったか、なにも変わらないまま在った。
あたしが辛うじて生き抜いた数年間。
ソレ以前の平穏な毎日と時間が、落ちたまま埋もれかけてる。
夕闇に呑まれすぎて、あまり側までは近付けなかったけれど。
無邪気な残酷が犇めき合ってた。
ブランコを振り切るように漕いで。
軟派な若者を振り解いた。
周りが見えなくなるくらい必死に漕いで。
まるで其れからの3年間みたいだった。

あたしが朝、起きないと。
父親はあたしの部屋を開け、「病気?」と聞く。
昔から変らない憂鬱。
あたしは家で喋らない。
どんなに怒られても、どんなに望まれても、どんなに泣かれても。
あたしは喋らない。
あたしに声なんて無い、と思い込んだ。

夕べみた夢は空を飛ぶ夢。
両手を羽ばたかせると、あたしの体は屋根まで届いた。
蜘蛛の世界から休憩をして、ひとを裏切る爽快感。
甘いお菓子をかじりながら、あたしは屋根の上まで飛べた。
裏切れば、飛べる?
何処までも往ける。
ただ、其の後、吐き気がした。
酷い吐き気で目が覚めた。
どうして何時も、上手くいかないかな。


⊂空襲⊃
2002年08月04日(日)

押し流された闇に

夕立を宛てがって

幾数頭の向日葵が

庭の真ん中でしなりを上げる

青い青い大気の奥に

昇る光が音を割ると

みそらの球体を回って知った

振動が鼓膜を叩く

暗いトンネルのむこう

おにやんまさえ進まない道

人肌に風

空から落ちて、刺す針

眠れない夜が連なり

ようやく迷子を覚えた頃の

深い藍色をした空が

僕に見せた

音の無い現実の世界

溺れた足の裏

雲が割れて

光が落ちる

何時か視ていた空襲の

骨組みのむこうの怒り

腕にしがむのは

誰のてのひら

目の前の騒々が

何故、こんなにも遠い

僕には何も興らない、と

もう息の失い身体

撫でて赤い桟橋を渡った



⊂ニガウリ⊃
2002年08月03日(土)

朝、庭を歩く、まるで御爺ちゃんのような日課を持っている。
田舎の家の敷地といっても、そんなに広い訳じゃなく。
ただ、見渡す限り、緑。
其処を1時間以上かけて何度も同じ場所を歩く。

先ずは家の前の坂道に向かい。
すぐ側にある墓地を、道に座り込んで眺める。
いずれ自分もあの場所に眠るんだ。
いずれ、ばあちゃんも、父親も、きっと。
そうして焼け始めたアスファルトにてのひらを当てて。
立ち上がり今度は庭に向かう。
あたしのてのひらよりも大きい、ハイビスカスに似た花も。
赤い百合も、白い百合も。
もう、枯れ始めた。
テッセンも咲かなかった。
そんな中で以外だったのは、ゴーヤの花の匂いの強さ。
ジャスミンに似た甘い匂いがする。
蔓をトマトに絡めてまで、必死に生きていた。
裏山には実の落ちたブルーベリー。
栗も柿も柚子も在る。
柚子と山椒の木には、アゲハの幼虫が棲んでいて。
黄色い角で、蝉の抜け殻を威嚇してる。
オレンジ色の花は、ソテツに依存していたし。
カブトムシを踏むと、相変わらず乾いた良い音がする。
余命少ない蝉は、空の方から降ってきて。
砂利道の上、羽を縺れさせてないた。
蜘蛛の巣は濡れて雪みたいに積もり。
奇形児の様な薔薇は、撓垂れていた。

雨の日も止むことのない、脳みその中の世界創り。


⊂嘔吐⊃
2002年08月01日(木)

僕は、誰だろう。




夢を護る番人。


右腕、真っ白な皮膚の上から。
青い青い血が流れているのが見えた。

だから。

切った。



夢は護りきれる?
脳味噌が灼けて仕舞いそう。

夢を護る為なら、傷付いても。


傷付けても。

僕は平気。


寧ろ、消えて。



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由弥 [御手紙]