振替で行ったレッスンで試打ラケットを勧められる。 ヘッドのプレステージの新型だ。 薄い記憶だが315gで95、320gで98というほどよいオールドタイプ向けのラケットである。 確かに使いやすい。 外しても飛んでくれる。 回転量もエグい。 一週間後の昨日エクストリームを試した。 もっと振りやすいし、飛ぶし回転もかかる、良いラケットだ。 しかし買うのは止めた。 良いボールをそこそこ楽に打てる事が目的では無いと分かったからだ。
俺は、自分の体を適切に使いその感覚でスイングしたとおりのボールが打てれば良いのだ。 ボールありきでは無い。 自分の労力に見合ったボールが出てくれば良い。
この感覚は10代20代のころ使っていたラケットに起因するものだと思う。 本格的に硬式を始めたとき使っていたのは、ヤマハのブロンズエースの中古だ。 このラケットが俺にスライスを教えてくれた。 次にブリジストンのrz−PROがフラットの強打を教えてくれた。 その後ウィルソンプロスタッフ(ビンセント)に挑戦した。 打球感は最高だった。 今でもその感覚は忘れない。 振った分だけ飛ぶラケットだった。 正直フルショットのスピードは中厚のRZ-PROに劣っていなかった。 フルスイングやトップスピンに注力せずにフラットスライスストロークを忠実に実現することが好きだったことで当て感が育ったんだと思う。 入れば良い、良いボールが打てれば良いが第一義的では無く、俺の中での第一義的なものは「しっかりスイートスポットに当てて打つ」 事だったと思う。 有り難い事にバランス感覚や足の速さが備わっていたため当てることに関しては上手かった。 アイドルがエドバーグだったことも大きな要因だろう。 芸術のようなプレースタイルのエドバーグは、必要以上にフィジカルを使って強打することは無く、必要なときに必要なだけスイングパワーを出すタイプだった。 そしてそのプレースタイルこそが、プロスタッフを使うプレーヤーの条件だとすら考えていたのだ。 しかしここで衝撃的なプレーヤーを知ることとなる。 サンプラスである。 全てが刺激的だった。 サーブ・ストローク・ボレー、全てが上手かった。 ボレーはエドバーグの方が上だと考えていたが、そもそもアプローチに対する考え方がまるで違った。 エドバーグは詰め将棋のようにバックスライスかフォアのフラットでコース深くにアプローチしてパスのコースを限定するスタイルだったが、サンプラスは襲いかかるようなフォアの強打でアプローチしていく。 よってサンプラスのファーストボレーは決めるかドロップボレーになることが多かった。 エドバークも決めボレーが多いが、相手が一度ネット際に沈めてボレーミスを誘うか1stボレーに対してもう一本パスのチャンスを覗うと言うことが多かった。 よって繊細なタッチとネットでの華麗な動きが必要とされていた。 華麗と称されるネットプレーだった。 対してサンプラスは強靱な猫のようだった。 繊細なショットも上手いのだが、エドバーグと比較すると、芸術方向では無くタッチセンスが全面に現れるネットプレーだった。
結局、サーブとストロークはサンプラスを目指し、ボレーはエドバーグのままテニスを続けることとなる。
二人の最大の共通点は、プロスタッフミッドを使っていることだった。 サンプラスを模倣するまで、フォアもバックもコンチネンタルで握っていたが、フォアもバックもイースタンよりのセミウエスタンに握り替えることになる。
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