愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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2015年10月27日(火) |
かまわないのなら、好きにすればいい |
なんやかんやで立て込んでおりまして、日記を書く余裕とか、LINEで雑談する余裕とかがありませんでした。余裕があっても、LINEで雑談はしないですが。先週末にハロウィンのイベントがあり、親子で仮装して参加してきました。私は適当に黒い服で適当な魔女的な感じで、それはどうでもいいんですが、もっちゃんは女装というか、プリキュアになりたいとかプリンセスになりたいとか言ってきかないから、ドレスを着ましたよ…。私は全然乗り気じゃなかった。いや、ほんとに。むしろ、穏便に阻止しようとした。当日、ハロウィンとは無関係のイベント(鉄道関係です)があり、毎年参加してたから、そっちに行かないかとか、恐竜の仮装を勧めてみたりとか、ドレス着るにしても魔女の黒い衣装にしないかとか、働きかけてみたのですが、それらは全て退けられ、ピンクのフワフワのドレスを着ることになったんです。私は、穏やかにもっちゃんに聞きました。「ハロウィンパーティーでは、自分の好きな仮装をすればいいと、お母さんは思う。でも、『男の子なのにドレス着て変なの』と思う子もいて、そう言われるかもしれないけど、それはかまわん?」そしたら、もっちゃんは、「かまわん。もっちゃんいがいのぜいいんが、もんすたーのかそうで、かっこよくても、もっちゃんだけは、かわいいぷりんせすのどれすでいく。なにをいわれてもかまん」即答でした。男らしい。なので、私は、「分かった。それなら、堂々と着て行こう」と。当日、男らしい心意気で、堂々とピンクのフワフワドレスで参加。どうということもなかったです。結構がっつり仮装してる親子も多い中、園児の女装なんか目立たない目立たない。夫がピンクのフワフワ着たら目立ってただろうけど。でも、たとえそれでも、私はかまわんですよ。夫が、「もっちゃんがドレス着るなら、俺だって。俺も、ピンクのフワフワが着たい!」と言うなら、好きにしたらいいです。せっかくの機会なんで。ちなみに、もっちゃんは、普段の服は普通に男児です。かわいい服を着たがったことはない。イベント後も普通に男児。女装がクセになったらどうしようかとちょっと心配していた。ちなみにドレスはネットで買いました。もっちゃん本人が選びました。
真田母からのケーキを持って家に戻ると、みんな大喜び。母が、お裾分けしたいから取に来れないかって、姉に電話する。電話中、話を中断し、母がこちらを向いた。 「真奈美、今日は来れないからケーキはいいって。残念だね。あと、結人に話があるってよ」 差し出された携帯を受け取り、 「何?」 『お母さんから聞いたんだけど、今度の土曜、暇なんだって?』 「暇っていうか、珍しくシフト入ってないんだよ。午前中に教習入れてるけど」 『じゃあ、昼からいるんだ』 「何か用?」 『もしかしたら、ちょっと寄るかも』 いつもは勝手に寄るか、連絡するにしても母に伝えるのに、わざわざ自分に言うのが不思議だった。 土曜日。母は妊婦健診で、父は付き添い。健診後、二人でランチして、買い物してからゆっくり帰ってくるとのこと。若菜夫妻は仲良しです。若菜は午前中は教習所。圭人はスイミング。今日は昼から真田が若菜家に来る。圭人もスイミングは昼までで、その後予定はなく、家に帰ってくるらしいので、三人でうちで昼ご飯食べようってなった。手巻き寿司パーティーでもしようかと。真田が寿司が好きとか言うからさ。手巻き寿司が好きとは一言も言ってないけど。圭人は、後で真田に勉強教えてもらうって張り切ってる。圭人は、水泳も勉強も頑張ってるよ。成績いいし。圭人の勉強をみてやれる人は、若菜家には誰もいません…。若菜が帰宅して間もなく、圭人が真田を連れて帰ってきた。ちょうどエントランスで会ったらしい。お腹空いてきたし、早速準備するか、となったときに、インターホンが鳴る。姉が来たのだった。 「インターホン鳴らすなんて珍しいな。いつもは勝手に鍵開けて入ってくるのに」 若菜が言ってるうちに、弟が玄関に行く。 「ちょうどいいとこに来たね。今から手巻き寿司するから、一緒に食べようよ。一馬が来てるよ。あ、何それ? なんかお土産? 甘いもの」 「甘いもの違うよー。昼ご飯の材料だよ。手巻き寿司は夜ご飯にしな」 弟と姉は話しながら、リビングへ。姉は、手にスーパーの袋を持っていた。 「久しぶり、一馬君。ごめんね、お邪魔しちゃって」 「いえ、こちらこそ、お邪魔してます」 「どうした、姉ちゃん。何買ってきたんだ」 「結人、私、あんたに料理教えてもらおうと思って。今から。そしてそれを、ここにいるみんなの昼ご飯にするわ」 「今から手巻き寿司しようとしてたんだけど」 「教えてもらうって、何の料理?」 話に割って入った弟に、オムライス、と姉が返す。弟は、 「あー、俺、手巻き寿司よりオムライスの方がいいかも。一馬は?」 「え? 俺は何でも…」 真田はこの展開に、ちょっと困惑してる。 「姉ちゃん、事前に言っとけよ。一馬来てるのにさ」 「事前に言ったら、断られるかもと思ったんだよ。一馬君、ごめんね! でも、何でもいいならいいじゃん、ね!」 「ほんとに、俺は何でもいいです」 「そんでオムライスかよ。クックパッドはどうした」 「本やネットで見て、とりあえず実践するでしょ。でも、うまくいかないんだよ。何故うまくいかないのかも分からないんだよ。ゼロから一人で始めるって、大変なことだね」 しみじみと言う姉に、弟もしみじみ頷いてる。 「分かる。泳げない人に、泳ぎ方を口で説明しても、全く伝わらないのと一緒だろ。ちゃんとついて教えなきゃ駄目なんだよな」 「今まで何もやってなかった付けが回ってきただけじゃねーか。けんちゃんがオムライス好きなのか?」 「そういうこと」 「母さんに教えてもらえばいいのに」 「ちょっと、結人、それ本気で言ってるの? お母さんより結人の方が明らかに上手なのに? そんな嫌味を言うなんて怖い子…」 「そんなことを真顔で言う姉ちゃんの方が怖いわ」 というわけで、オムライスを作ることになりました。 「俺、何か手伝おうか?」 弟が言うのに続いて、 「あ、俺も何か手伝うことがあるなら」 と、真田。 「いや、いい。圭人、勉強みてもらうんだろ? 一馬、なんか色々ごめんな。よろしく」 「いや、俺は別に」 「一馬、兄ちゃんのオムライス、美味しいよ。楽しみだね」 「うん」 ハードル上げられるし。 「そんじゃ、まず、玉ねぎ刻むか」 「はい…」 包丁を握り、玉ねぎを前にした姉だが、 「包丁、こわっ」 「おいおい」 「見本みしてよ」 「こんな感じで」 手慣れた様子で玉ねぎをみじん切りにする若菜を見て、姉はますます固くなる。 「私、不器用だから…」 「同じやり方でなくていい。結果的に細かくなったらそれでいいんだから。包丁でやりたくないなら、フープロでやったっていいし。うちにはないけど」 「…うん」 それでも、姉は手を動かそうとせず、じっと玉ねぎを見つめるばかりだった。 「姉ちゃん、俺は、普通に普段の家庭料理では、器用とか不器用とか、センスの有る無しは、関係はあるけど、大した問題じゃないっていうか、気にすることはないと思う。要は、やるかやらないか。姉ちゃんはけんちゃんに、オムライスを食べてもらいたいんだろ。だったら、やるしかない。やってりゃ、それなりにできるようになる」 「…うん、分かった。はー、今、生まれて初めて、あんたのことをちょっとかっこいいと思ってしまったわ。一瞬だけど」 「あーそーですか」 そんでまあ、つまずきつつも、なんとかオムライス完成ー。 「うまー!」 弟が、一口食べて声を上げた。 「おいしい」 真田もそう言う。 「まあ、お腹空いてるしな」 「結人、余計なこと言うんじゃないよ。ほんとに美味しい。上出来だよ、我ながら」 「はいはい」 「あ、けんちゃんの中国行きの話、なくなったみたい。いつかは行くことになるかもだけど、どうか分かんない。だから、これからも、色々教えてね!」 「無償でかよ。デザートくらい買ってこいよ」 「了解ー」 片付けは、弟と真田でしました。その後、姉は帰り、弟は、途中になってた勉強を真田にみてもらい、若菜はそのへんでくつろいでる。勉強が終わったあと、三人でゲームしたり、画面見るのに疲れてきて、久々にトランプでもするかってなるけど、トランプがどこにあるのか分からず、探してるうちにもうどうでもよくなる。そんなこんなで夕方になり、真田はもう帰るって。 「手巻き寿司も一緒に食べてけばいいのに」 という弟に、 「ありがと。でも、また今度な」 と、真田は言って、立ち上がる。 「一馬、ありがとう。また、俺がいるときに家に来てくれる? 一緒にご飯食べたり、勉強みたりしてくれる?」 弟は、本当に真田と離れがたい様子だった。 「もちろん」 真田が微笑んだ。 (おーおー、なんつー優しい顔を) 「下まで一馬を見送ってくるわ」 という若菜に、俺も行く、と弟が言うかと思ったのだが、うん、とだけ返ってきた。 家を出てから、 「ごめんな、なんか」 「ううん。美味しかったよ、オムライス。だから、よかった」 「あ、そう? なら、よかったけど」 なんか微妙に照れるんだけど。 「見送りなんていいのに」 一緒にエレベーターに乗り込む若菜に、真田が言った。 「お前、皿の洗い方、ぎこちなかったぞ。普段全然してねーな。食器下げるくらいはやってんだろうな?」 「…う、ん?」 「ははっ、別にいいけどさー」 真田家は、家のことは全部母がやっちゃいますので。 (ホワイトデー、どうするか考えてくれてる?) って、聞きたいけど、それもなあ。
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