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何がなくなってしまったのか 2002年11月30日(土)

夢を追いかけていた僕は
きっと君から見たら
とても汚いものに
映っていただろう

目に見えるものも
目に見えないものも
僕は求めて
駈けずり回って

さあさあ
ここにありますは
とっておきの宝物
君にお見せいたしましょう

君はそれでも
手で目を覆い隠して
見ようとしない

そんなに汚らわしいかい?
見たくもないものなのかい?

さあさあ
ここにありますは
とっておきの宝物

君のために
君のためだけに
僕は持ってきたんだ
君に見せるために




世界滅亡するならば 2002年11月29日(金)

私だけ
私だけ
私だけ

この世界にいればいい

ああ
でもやっぱり
寂しいから

君だけ
君だけ
君だけ

君と私だけ
この世界にあればいい




自己嫌悪 2002年11月28日(木)

きっと私は
いろんなものに救われてきた

だからと言って
私がその
いろんなもののため
に生きたことなんてない

私はやっぱり私が大事なんだ

そればっかりが頭をよぎる

きっと私は
いろんなものを壊してきた

それはもう直せなかったし
諦めることが多かった

だけど
いろんなものが
私のことなのに
私よりも
必死に必死に
それを直そうとするんだ

私がやったことなのに
私がやめたことなのに

壊したくなかった
諦めたくなかった

それは口先だけの言葉

本当は壊したかったのかもしれない
本当は諦めたかったのかもしれない

いろんなものが私を助けてくれるから
何かをしでかせば
いつだっていろんなものが私に集まるから

弱いフリばっかりしてた
強がって泣きそうなフリばっかりしてた

何もかもが奪われるのが嫌で怖くて
私は嘘ばっかり吐いていた

繋ぎとめておきたかった

いろんなものを
側に置いておきたかった

ひとりぼっちなんて嫌だ

私のことばっかり
私のことばっかり

いろんなものを
いろんなものとして
私は受け止められない

ひとつのものとして
受け止められない

私を助けてくれるいろんなもの
そういうひとくくりになってしまう

ありがとうも言えない

結局
最後は私だけが残って
汚い空気だけが
私に纏わりつくんだ




並木道歩いて 2002年11月26日(火)

「落ち葉を踏むとこうばしい匂いがするのよ」

お姉ちゃんは優しく言った

けど
私には
その匂いが
凄く嫌なにおいで
早く逃げてしまいたかった

お姉ちゃんは優しく笑って
高い底のブーツで
落ち葉を踏みながら
私が後ろにいるのを
確認して歩いた

私は下を向いて
色とりどりの落ち葉を見た

黄色

茶色

どれも
くすんでいて
私には綺麗な色には
見えやしなかった

「落ち葉が一番この世で綺麗で悲しいものよ」

お姉ちゃんは
悲しそうな笑顔で言った




お別れしたあとに。 2002年11月23日(土)

嘘をついてしまえばよかった
寂しいから側にいてって言えばよかった
腕を組みたいと言えばよかった
あなたが嫌いって言ってしまえばよかった
ぎゅっとしていいか聞けばよかった
私が好きか聞けばよかった
私のこと嫌いじゃないか聞いておけばよかった
あなたの前で泣いてしまえばよかった
卑怯でもあなたを繋ぎ止めておけばよかった

嘘なんか吐かなければよかった

あなたを愛してると
言っておけばよかった




2002年11月21日(木)

風はどこから来るのだろう
風はどこから生まれるのだろう

車が走ると風が起こる
世の中沢山車はあるけれど
この私の頬に吹き付ける
この風にはなりきれない

誰が作るのだろう
誰が運ぶのだろう

むしろ
風は存在しうるのか

風と溶け合って
風になって
誰も触れない
何もわからない

ああ
私は
誰かを守る風でありたい




子供の世界 2002年11月19日(火)

それはとても幸せな話だったのでしょう

女の子一人
男の子一人

二人は愛し合ってた

何も変わらない
日曜日の午後
二人は
二人きりで
遊んでた

シーソー
鉄棒
ジャングルジム
ブランコ
のぼり棒
砂場

二人は
二人だけの世界にいた

愛し合ってた

だけど
子供は子供で
大人の事情に振り回される

二人はただの
子供だった

でも
愛し合ってた




お母さん 2002年11月17日(日)

黒くて大人っぽいワンピース
真っ白なブラウス
少しレースが付いて
ちょっと背伸びしたブーツ
黒くて高そうなバッグぶらさげて

女の子は二番館へと走る
ちょっぴり気取って
お金はギリギリよ
でも大丈夫

履き慣れない靴で駆ける
頬は桃色
知らず知らずのうちににやける顔
待ってるのは淡い期待と
恋人

それはお父さん?

ううん
違うなあ

笑ってる
女の子と並んで
手をつないで

ブーツを履いた女の子と
同じくらいの背の男の子

だけど
二人は幸せそう

お母さんは目を瞑りながら話す
穏やかな微笑みで
とても懐かしそうに

それは二十年前の話

お母さんも
恋をしていた




校門前 2002年11月15日(金)

あなたが好きです

初めて会ったときから
気付いていたんです
私はあなたを好きになる

あなたが好きなんです

大好きなんです
愛しているんです

あなたも
知っていたでしょう
きっと
きっと
きっと

目が合ったときから




鳥篭の鳥 2002年11月14日(木)

いつも不器用な君
似たもの同士の私たち

底に落ちるときは
いっしょに沈んでしまって

あぁ
なんか
馬鹿みたいだね
なんて笑って

手を
両手つないで
結んで

冷たい指先

温めて
温めて
温め合って

遠い感覚
苦い思い出のフラッシュバック
堪えられない朝の涙
苦しそうに頑張る姿

現実逃避

苦笑い
短い沈黙

喋っていないと
怖くて仕方ない

「寒いね」
って何度も言う
「寒いね」
って何度も答える

手をつないで
ここから連れ出して

檻の隙間は
まだまだ狭い




あなたのもの 2002年11月12日(火)

あなたが
完全に欲しくて
私はいつでも
その機会を窺うの

本当は
いつだって
そのチャンスはあるんだけど

私は
安全な方に
安全な方に

それしかできないの

だけど
あなたが完全に欲しい

もう私は
完全にあなたのものなのにね




サヨナラ 2002年11月09日(土)

私は明日
あなたに「サヨナラ」
なんて言えるのかな

別れなんて
目が合ったときには
頭になかったんだよ
恋なんて
話をしたときには
知らなかったんだよ

いつのまに
なんだろうね
どこから
なんだろうね

腕を組んで
初めて歩いたんだ
耳元で囁きあったんだ

それは
涙混じりの
後悔の話だらけだったけど

最後なんて
わからないんだよ
これは最後じゃないのかな

お願いは通じないかな
お祈りは届かないかな
手を離すなんて


本当は
ずっと
笑い合っていたいんだよ?




静寂 2002年11月05日(火)

どのくらい
こうやって生きてきただろうか

何もせずに
ここに座って
言葉も発さずに

何も始まらないことなんて
知っていた
動こうとしないから
当たり前

だけど
何かを起こすことが
怖かった

だから
今もこうやって
じっと座っている

そして
待っている

静寂のときだけを
僕は過ごす




君のこと 2002年11月03日(日)

どのくらいの割合で
僕の体は
君のことで占めているのだろう

朝起きたら
まず君のことを考えて
ちょっと笑って

それからずーっと
君のことを考えて

考えすぎて疲れたら
少し休んでみるけど
でもまたすぐ
新しい君が思い浮かんで
また笑ってしまう

いったいどれくらい
君のことを考えれば
僕は気が済むんだろう




別れを告げた日 2002年11月01日(金)

さよならを言われた

君は少し俯いて
マフラーを巻いて
口元を少し隠して

前髪が伸びたね
目がよく見えないんだ

泣いてる?
泣いてない?

とても寒かった

コンビニに入って
肉まんを買って
ちょっとだけお喋りをして

君は立ち止まって
さよならを言ったんだ

長いコートに身を隠して

それでも
足元は震えてた

ポケットに手をつっこんで
きっと君はその手を
握り締めてたにちがいない

冗談なんかじゃないんだね
君の嘘をつけない性格
よくわかってるのはこの僕だ
大事なことを言うときの君の癖
よくわかってるのはこの僕だけだ

さよなら

僕も静かに言おう





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熊野
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