川底を流れる小石のように。  〜番外編〜  海老蔵への道!
もくじを見てみるひとつ前現在に近づいてプチ画像日記


2004年01月25日(日) さよなら新之助。

 寿 初春大歌舞伎、千秋楽の一日前の日曜。
 歌舞伎座夜の部は満席。
 一階には補助席も沢山出てる。

 三階A席一列目。
 ここからの眺めが好きだ。
 「鎌倉三代記」では、驚くほど大勢の大向こうからの声。
 自分も三階席にいるせいか、大向こうの声があまりにも多くて、
 ちょっとうるさく感じる。
 かけ声が全く無いのもさびしいけれど、多すぎるのも粋じゃない。

 お弁当は、歌舞伎座の向かい「銀座 伊まさと」の海鮮ちらし。
 あんまり可愛らしかったので、プチ画像日記にアップしました。
 目でも楽しめるお弁当で、幸せな気持ちに。

 「京鹿子二人道成寺」
 こうして見下ろすのも、また良い。
 今までは夢中になりすぎて、
 次から次へと早変わりする着物が一体何着なのか、よくわからなくなってた。
 遠くから眺めて、少し冷静に数えてみると、
 着替えの回数のやや多い菊之助は8着の着物姿で登場してた!
 それだけでもすごいもんだ。
 先日母とも、菊ちゃんは玉さんの隣で毎日踊って、
 大変だったろうけど、いい経験になったでしょうねーと話した。
 こういう機会を与えられて、それだけ新も菊も期待されてるんだな。

 「十六夜清心」
 平成2年に、孝夫時代の現仁左右衛門さんと玉さんの十六夜清心を見た事を思い出す。
 当時わけもわからず、大まかなあらすじだけの予備知識で見たはずだったが、
 薄暗い場面は今と変わりなくても、
 何とも言えない「やむにやまれぬ」空気が色濃く漂っていたような気がする。
 孝夫清心が、玉十六夜と心中しようということになったやむにやまれぬ感や、
 それでも生き残ってしまったやむにやまれぬ感じ。
 そして、闇夜の舞台にねっとりとたちこめる色気が印象深い。

 かわって新之助の清心。
 色っぽいというよりは、あやうく美しい。
 ねっとりというよりは、さらりと儚げ。
 やむにやまれぬというよりは、なんでこうなっちゃうんだろうかという感じか。
 それでも鬼薊清吉に心が変わるあたりの、
 ギラリと居直る鋭さは気持ちが良くて、いいぞー!と思う。
 そして、仁左さんとは趣がちがっていても、新なりに、
 「こういう清心」という形を、少しずつ捕まえつつあるようなのが窺えて、
 安心して見られるようになった気がした。
 
 花道、眼光鋭く石つぶてを投げつけ、裾をからげ袖まくりで引っ込む新は、
 この先がもっともっと見てみたい色悪ではあった。


 翌日は千秋楽。
 今日で新之助の歌舞伎が観られるのもおしまい。
 十六夜清心では「成田屋!」ではなく「新之助!」の大向こうの声が
 数多く飛んだそうだ。(新聞記事によると)
 
 別になんでもないと思ってた。
 新之助自身がいなくなるわけじゃなし、
 海老蔵になって、また舞台で輝いてくれるのだろうから。
 それでも、こうして今日が楽で、
 あー今頃幕が降りたな・・・と思ったら、
 ぽっっかり穴が空いたみたいな、
 行き場所のないような、
 そして襲名への緊張感も伴う、静かなどんよりが襲ってきた。

 新自身はインタビューに「7歳から20年弱、新之助をやってきたから、
 寂しくて泣くかなと思ったけど、思ったよりもなんともなかったね」と
 晴れやかな表情で節目を語ったそうな。(東京中日スポーツ)

 当事者は懸命だろうし、そんなものかもしれないなと思う。
 ひたってるヒマなどないのかも。
 それでも私はなんだか寂しくて、
 この一年の雑誌のスクラップやインタビューや舞台写真を、しみじみ眺めたり。
 立派になってーとか、色々あったねえーとか、
 親戚のおばちゃんみたいになってしまう。
 
 これからますます忙しくなって、ますます大きな役ばかり、
 本当に楽しみにしています。


 ○○追記○○
 次の二月の歌舞伎座は、観劇をお休みしようか?とも思ったのですが、
 仁左右衛門、玉三郎、団十郎の三人吉三を両花道で観られると知り、一度だけ行く予定です。
 ちょうどその日は節分なので、歌舞伎座で豆まきして福はうちー!ですね。
 
 
 


2004年01月20日(火) 寿 初春大歌舞伎 通しで一日 おまけの楽しみ

 昼の部(一階二等席)
 
 「高坏」の新之助は、一層かろやかに洒脱になったような気がした。
 けれど、少し目許にクマらしきものが見られ、
 今月の舞台をつとめるだけでなく、
 きっと襲名の準備に追われているのだろうな?とちょっと心配。
 やはり一階席は見やすくていい。
 勘九郎の高下駄タップも、楽しく堪能。

 昼は外へでて、歌舞伎そばへ。
 手慣れた風のおじさん達に見習い、作法を真似る。
 それにしても、ここのオヤジさんの蕎麦のゆで方が凄い。
 後ろ姿や横顔しか見られないのだけど、
 その素早い身のこなしは、まさに舞踊のよう。
 おかみさんとの掛け合いも絶妙で、一幕見てるような楽しさだった。
 30分の幕間中ずっと満席の歌舞伎そば、また来たい。

 「仮名手本忠臣蔵」九段目 山科閑居
 じっくりと、複雑に絡み合う人間模様に見入る。
 子を思う親の心、忠義をつくす男の生き方、
 そして残される女の悲しみ、
 幕切れに全ての心の内があきらかになり、
 悲しみの中で若い二人は、たった一夜だけ共に過ごすことに。
 は〜切ない。
 新之助の力弥は儚げで、
 これがこないだ荒ぶる佐藤清正を演ったのと同じ人とは思えない。


 夜の部(一階一等席二列目)

 「鎌倉三代記」
 やはりこんなに舞台に近い席だと、観ていても緊張感が違う。
 三階で観るときよりも背筋が伸びるというか・・・。
 いくら雀右衛門の時姫が美しいとはいっても、
 こんな近くで見ちゃうといけないんじゃないか?と思ってたが、
 そんなことは全くなく、醸し出される気品と身のこなしは、あくまで可憐であった。
 注目している竹本葵太夫の日記を読んで、義太夫の方と役者さんはこんなお話をなさってるのだ・・・と驚いたので、
 葵太夫の語りを聞きつつ、姫の心の動きに注目すると、
 ますますじんわりと感動してしまう。
 (ついでにワイドショーネタみたいでなんだが、菊五郎と幸四郎の様子も垣間見られて、
  ふうーんと思ったり。葵太夫ったらさりげなく書いてらして、もう!)

 見終えた後、近くの席の声高なおばさんが「ぜんっぜん面白くなかった!」と何度もブウブウ言っており、
 ほんに人それぞれ・・・と思う。

 「京鹿子二人道成寺」
 この舞踊は手ぬぐいを使って踊る場面があり、
 玉三郎と菊之助の手から、そして聞いたか坊主の所化さん達の手からも、
 客席に何本かの手ぬぐいが撒かれる。
 私が観劇日記を読ませていただいてる何人かの方のうち3人が、
 今月その手ぬぐいをゲットしたと聞いて、
 おーそれは良い記念になることだなあ、よいなあと思ってた。
 けど新之助命のくせに、玉三郎や菊之助の手ぬぐいまで欲しがるのは欲張りだろうと、
 自らを戒めていた。
 (最近歌舞伎の夢ばかり見るようになって、実は手ぬぐいを手に入れる夢までみてしまったんではあるが)
 それでも二列目で観ていると、いかにも手ぬぐいが飛んできそうな席ではある。
 この場面では舞台に控えていた所化さん達14名が、
 それぞれ手近な席に向かって手ぬぐいを投げるのだが、
 受け取るコツを、この方の日記で教えていただき(というか勝手に読ませていただいて)
 いよいよそのシーン。
 ちょうど目の前の所化さんに、熱い視線を送っていると、
 最後の一本をポイとちょうど私の手の中めがけて、投げてくれたじゃあないか!
 そんなわけで、今手許には、玉三郎と菊之助の紋が描かれた記念の手ぬぐいが。
 あーうれし。

 「きいたかーきいたかー」と登場する聞いたか坊主は、今月豪華に25人もいて、
 そのうちの一人、年若い所化さんが、
 客席の最前列あたりをチラチラと見つめており、
 なんだ?お気に入りか彼女でも来てるのか?と思ってた。
 後で筋書を見てみると、この若い方は板東亀寿さん。
 こういうの(キョロキョロとか、モジモジとか)ってありそうで、実は見たことがない。
 そういう意味でも板の上の役者さんは美しいなーと思ってしまう。
 お行儀悪いよ亀ちゃんってば、と苦笑い。
 終演後ふとみると、そのあたりから立ち上がったのは女優の常盤貴子さんであった。
 すっごく可愛らしい美しい人でした。
 これじゃ小僧さんも目がくらんでしまうというもの。
 ちょうど目の前に来た常磐さんを、私もうっとり見つめてしまった。
 今朝のニュースで、昨日常磐さんが主演の映画「赤い月」完成披露会見を行い、
 美しいドレス姿3着分が話題になっていたのを見たばかりだったので、尚更。
 常盤さんの私服姿も、さりげなく凝っていて可愛らしかった。

 それはさておき、間近でみる道成寺。
 玉三郎は、さすがにスキがなく美しく、どの角度から見つめても素晴らしかった。
 一方の菊ちゃん、そういう意味ではときにみだれるようなところもあるが、
 そこがまた愛しいというかなんというか。
 鐘入りの時の「おばけ毛」(っていうのかしらん?)、
 私の席からは玉菊二人が、鐘の後ろでスルリとそれを引っ張り出すのが見えて、
 おお?ああやってひっぱりだすのか?!とたまげたり。
 

 「十六夜清心」
 苦手か?それともまだ早いのか?と思われた新之助の世話物ではあるが、
 新なりに、自分らしい清心を少しずつ見つけつつあるように思った。
 見所の変わり目とはいえ、同じ人間が一瞬の気持ちの切り替えでここまで変わるものなのか?
 みたいな疑問が私の中にはあるようで、
 それが違和感の一因だったかもしれない。
 初日に比べると、始まりからの声の高さが落ち着いて、
 新らしい二枚目半な清心の落としどころを探しつつあるというか。
 そんな変化が嬉しい最後の幕。
 清心に殺されてしまう若衆求女(もとめ)が花道を出てくる時、
 清心と求女の「渡り台詞」のシーン。
 客席は花道に注目している人がほとんどだったけれど、
 新が目の前にいるというのに、どうして目をそらすことなどできようか。
 頑張れ新!
 
 

 あー歌舞伎はやっぱりたのし。



 ○○追記○○
 そんな今月の歌舞伎座も、もうすぐ千秋楽。
 楽は仕事で行けないけれども、25日は三階でみてくるつもりです。

 画像いくつかアップしました。


2004年01月14日(水) 寿 初春大歌舞伎 夜の部 その2(母へのお誕生プレゼント)

 幕間。
 さっきまで福袋を売っていたコーナーに、突如舞台写真が張りだされてる。
 おおー。
 母は座席で大人しく待ってるというので、
 写真購入の長い列に加わる。
 母には「善きこときく」柄(菊ちゃんのマークみたいなもの)のブロマイド帳に
 二人道成寺の綺麗な写真を入れてプレゼント。

 三幕目。
 「花街模様薊色縫」さともようあざみのいろぬい 十六夜清心

 これを一番に母に見せたかったし、観たかった。
 とはいえ初日のテレビ生中継では、新之助の魅力が充分に発揮されているようには思えず、
 一抹の不安も。

 廓の遊女・十六夜と深い仲になり、女犯の罪で寺を追われる所化清心。
 都へ出て修行しなおそうとするも、十六夜と再会し、
 しかもお腹には自らの子まで宿していると知り、手に手をとって心中を決意する。

 ところが泳ぎの得意な清心は一人助かってしまい、嘆く。
 (清心は知らずにいるけれど、十六夜も別ルートで助かってしまうのだが・・・)
 その後、はからずもさらに罪を重ね、追いつめられる清心。
 ついには悪に目覚め、鬼薊清吉(おにあざみせいきち)として生きてゆく〜〜。
 
 黙阿弥らしい世話物で、七五調の台詞も心地よく・・・のはず・・・。

 初っぱな上手の清元が鳴り始めると、むうう。
 清元ってこういうものなの?
 高い声が苦しそうに聞こえて、ちと気になる。ような。
 とはいえ新はやっぱり美しく、指先や背すじの伸びやかな後ろ姿に見とれてしまう。
 次第に黙阿弥ワールドへ染まってゆく気持ちに。

 後ろのばあちゃんの咳も、奇跡のように治まり、やればできるじゃん!などと思ったり。
 (けれど、このばあちゃん、新が出てきたら「あれは菊五郎の息子だ!」と言い切ってた。)

 ゴーンと鐘の音。
 ぽっかり浮かぶお月様。
 「・・・しかし待てよ
  今日十六夜が身を投げたも
  またこの若衆の金を取り、殺したことを知ったのは、お月様とおればかり
  人間わずか五十年・・・首尾よくいって十年か二十年が関の山
  つづれを纏う身の上でも金さえあれば出きる楽しみ
  一人殺すも千人殺すも、取られる首はたったひとつ
  同じことならあのように騒いで暮らすが人の徳
  こいつあめったに死なれぬわえ」
 
 おおー。
 こっちの鬼薊の方がかっちょいい!もっと見てみたい!というこちらの希望をよそに、
 本日はこれにて幕。

 明るくなった場内で、ポカンとする母。
 ここからがおもしろそうだったのにいー。
 そうだねえとなだめる私。

 けど、私は全然、黙阿弥勉強不足と反省。
 どうして当時こういう台詞がうけたのか、実感が湧いてこない。
 お芝居を観ている間の心持ちが
 しっとり色っぽくなのか、切羽詰まってハラハラしてなのか、
 ちょっとコミカルになのか、心中だもの悲しげに儚んでなのか、
 どんな気持ちになったらいいのか戸惑ってしまう。
 正解なんてのはないのかもしれないけれど。

 新之助のオーラも、今日は少な目な気がした。
 おかんにも、三階まで届くような花道力(っていう言葉があるのかどうか不明だが)見せたかったな。


 それでも一日目一杯楽しんで、
 ブラブラと銀座へ出る。
 こんな時はやっぱりお蕎麦だよねと、見かけた蕎麦やへ飛び込む。
 「木挽町 砂場」は、場所がいいなと思ったけれど、
 酔っぱらいオヤジの天国と化しており、かなりにぎやか。
 まあ母娘二人、各々今日の舞台の事で頭はいっぱいでへっちゃらだったが。

 ホテルに戻ってもう一度乾杯。
 あーでもないこーでもないと、あれこれ語って夜はふける。


 ○○追記○○

 風邪が流行ってきてるようですね。
 これでなんとか風邪を吹き飛ばしたいものです!

 


2004年01月13日(火) 寿 初春大歌舞伎 夜の部 その1(母へのお誕生プレゼント)

 新幹線のホームで母をピックアップ。

 銀座に移動し「オストラル」でランチ。
 平日だというのに満席だ。
 大きな牡蠣や、ふんわりしたフォアグラや、
 プリプリのホタテや、香ばしい海老や、柔らかい子羊。
 シャンパンからはじまって、白ワイン、赤ワイン、とグラスでいただく。
 どれも香りが良くて、料理にピッタリ!
 ゆっくり時間をかけて、近況報告。

 最後におかんが、やっぱりビール飲みたいと言いだし、大笑い。
 散々フレンチ食べて、ワイン飲んで、でも仕上げはビールなのねー!
 とはいえ、ソムリエが給仕してくれたビールは、
 理想的な冷え方と注ぎ方で、CMに出てくるビールのような美しい泡立ち!
 思わず見とれて拍手してしまう。
 
 綺麗なデザートまで堪能し、お誕生祝い第1弾とする。

 今日の宿は「ホテルモントレ銀座」。
 以前「パリみたいな雰囲気のホテル」という記事を読んで、行ってみたかった。
 初夢プランのパックで、スイートルームで、バスローブもついて、
 ウエルカムチョコレートと、翌日12時チェックアウトなのに、お安い。
 可愛い部屋で、窓からの銀座の眺めが新鮮だった。
 ちょっと横になり、歌舞伎まで鋭気をやしなう。

 ここから歌舞伎座までは、歩いても五分程度。
 いよいよ夜の部のはじまりはじまり〜。

 急遽手に入れたチケットだったので、一等席とはいえ随分後ろの方。
 それでも全体を見渡せるので、まあヨシとする。
 筋書、歌舞伎座掌本、イヤホンガイドを渡し、使用法説明。
 観劇中にイヤホンガイドの機械をガしゃーんと落っことす人が多いのだ。
 すると母は、自分のバッグにくくりつけていた。
 (そして、後の幕間でお手洗いに行こうとして、こんがらがって難儀する羽目に。わはは。)

 一幕目
 「鎌倉三代記 絹川村閑居の場」
 重厚な時代物。
 長老の84歳になるという中村雀右衛門が北条時政の息女・時姫をやるというので、
 どんなもんだろ?と思っていた。
 だって84歳のおじいちゃんだよ。それがお姫様だよ。真っ赤な着物だよ。

 それがびっくり。
 雀右衛門のお姫様、本当に綺麗・・・。
 なんともいえない品があって、姫の気位の高さと恋する乙女心。
 黙って俯く姿だけでも、生き生きと色づいて、ほぅ〜と見とれてしまう。
 歌舞伎って、ゆっくりとしたテンポの中で、
 他の人が話したり、見得がきまったりしてる時は、
 ひたすらジーーッと座ってたり、立ってたりする事が多いのだけど、
 ただ、つっと立っているそれだけの中に、切ない姫の呼吸を感じてしまって
 これが歌舞伎かあー!と改めて感動。
 
 とはいえ時代物だし、筋は複雑だし、
 横の席のじいさまも後ろの席のばあさまも、
 競争のごとくゲホゲホ、ゼロゼロ咳を繰り返し、
 おまけにばあさんは耳が遠いらしく、大きな声で、
 「長すぎるよねー。たまさぶろはまだかねー」などと言いだす始末。
 オイオイ。
 今日は早起きだったおかんも一瞬、寝てしまったらしい。
 でも義太夫が良かったー!と喜んでた。

 たっぷりフレンチのせいで、お腹がへらないので、幕間は歌舞伎座探検へ。
 すると、開運の小槌の実演販売に釘付けのおかん。
 小さな小槌の中に、さらに小さな小さな縁起物を次から次へと入れてゆく。
 それもテレホンショッピング?とでも思うような歯切れ良い話術つき。
 恵比寿様、大黒様、サイコロはどこへ転がっても必ず芽が出ますように、
 カエルは出ていったお金が返る、旅に出た人が無事帰る、
 六つのひょうたんは無病息災、小判、
 南天の赤い実は、難転といって難を転じて福と成る、
 狸は他抜、破魔矢に、だるまで七転び八起き、
 これが全部入ってネジでぎゅっとしめて、ハイでき上がり。
 すっかり気に入ったおかんは、これをお土産にするといって6個お買いあげ。
 とっても嬉しそうだった。
 おかんと私が釘付けになってると、呼び水になったのか、
 開運小槌は飛ぶように売れていた。

 二幕目
 「京鹿子娘二人道成寺」道行きより鐘入りまで
 
 いやーこれが凄かった。
 こんなの観たことなかったっす。
 玉三郎と菊之助、美しい二人の白拍子花子。
 全く同じ衣装であでやかに踊るおどる。
 豪華な衣装が、引き抜きや差し込みで、次から次へたちまち早変わり。
 玉三郎は妖艶で官能的、菊之助はあどけなく初々しく華やかで本当に綺麗。
 なんというのか、みていると女心をザワザワと高ぶらせてくれて、
 アドレナリンが駆けめぐるような気持ち。
 ラストの鐘入りでは、二人の花子は蛇の正体をあらわし、
 愛しい恋人を隠してしまった憎い鐘を、切なく狂おしく見入り、
 美しく極まって幕。。。!
 もうその時の菊ちゃんの表情といったら!!
 大きな拍手に紛れて、思わず音羽屋!と、小さくかけ声を叫んでしまった。

 隣のおかんも、すっかり堪能燃焼したようで、ほう〜っとうっとり。
 ねえ、どっちが良かった?どっちが好き?と聞いてみると、
 意外なことに「もちろん菊ちゃん!」と即答。
 きれいで可愛くて華があって・・・・と絶賛してた。
 玉三郎と答えると思っていたので、へーだった。
 
 三味線十丁のつれびきも、それは見事。
 けどさ、今度はこっちかたの隣のおばちゃんがさ、
 唄を一緒に口ずさむのよ。
 それがまたへたっぴいで、ちょうしっぱずれ。
 習い事かなにかしてるのかもしらんけど、好きなくだりなのかもしらんけど、
 勘弁してほしかった。


 ○○追記○○

 あれだけ周り中で咳してたので、よく手洗いウガイをしたつもりだったのですが、
 週末には私も風邪をひいてしまいました。
 遊ぶには体力も必要です。ほんとに。


2004年01月04日(日) 寿 初春大歌舞伎 昼の部

 今月の歌舞伎座は2日が初日だった。
 さぞお正月らしい雰囲気だっただろう。
 まずは、大きな門松や繭玉飾りを見上げて、あけましておめでとうございます!

 入場するなり、いつも真っ先に行くのは「歌舞伎座掌本」の置いてある棚。
 無料でもらえる冊子なのだけど、その月の演目のエッセイや解説、用語辞典、
 そして前の月を観た読者からのお便りのコーナーもあったりで、
 読むのが楽しみだった。
 たっぷり置いてはあるのだけど、幕間に行くと無くなってる事もあるので、
 入場したら真っ先にもらう。
 今月号には、12月の新之助の感想もきっと載ってるだろう。
 まあ、こういうお便りのコーナーだし、辛口の意見はそうはないだろうと思うものの、
 余所の人がどんな感想を持ったのだろう?というのは気になる。
 そしたら、なんと予想以上!
 どのお便りも、どのお便りも、新之助についてふれ、
 久々の歌舞伎座を「おかえり!」と喜んだり、褒めていたり、
 読んでいて嬉しくなった。
 (今、数えたら、11通のうち10通の方が、新之助について書いておられる)
 このコーナーの面白いのは名前と年齢の他に歌舞伎歴も書いてあり、
 例えば(77歳、歴66年)とかそんな具合。
 なかには「成田屋三代の実盛を観て感無量」などという方もいて、ほーと思う。

 今日は三階B席東2520円也。

 「義経千本桜 鳥居前」
 松禄の忠信は、隈取りも鮮やかに、瑞々しくて、思ったよりもずっと良かった。
 早見藤太は片岡亀蔵。
 先月の牛娘ですっかりおなじみになってしまって、実は相当に好きになってる私。
 こういう役の方を普段はやっているのだろうけど、おおーと思う。
 それでも、独特のおかしみや愛嬌があって、やっぱり亀蔵さん、好きだわーと思う。
 松禄の花道のひっこみ、力みなぎる見得では、
 ピンと反り返る足の親指が、これは新之助の方がきれいだもんねーなどと、
 身贔屓な感想。
 

 「高坏」(たかつき)
 昭和初期に流行していたというタップダンスのステップを取り入れた、踊りの一幕。
 勘九郎は高足下駄でタップを踊るのだそうな。
 桜に彩られた舞台。
 次郎冠者(勘九郎)は大名様と一緒に花見に出かける。
 酒宴用の高坏を買ってくるよう言いつけられたものの、
 高坏を知らない次郎冠者。
 そこで出会った高足売(新之助)にだまされ、高下駄を売りつけられ、
 しかも大名のお酒まで高足売と一緒に飲み干してしまい、叱られる。
 酔って言い訳をしているうちに、次第に高足を履いて踊り出す次郎冠者・・・。
 大名の弥十郎も、先月の狐狸狐狸ばなしでお馴染みで、
 大名姿を見て、新鮮に感じる。
 こうやって好きな役者さんが増えていくのかも。

 高足売りに扮した新之助が出てくると、ぱあ〜っと客席が笑顔でいっぱいになった。
 もちろん楽しい演目のせいもあったのだろうが、それだけではなく、
 あたりまで輝かせ支配してしまうような華がある。
 三階B席は、さすがに舞台は遠いけれど、
 こういう客席の反応なども俯瞰できるのが楽しい。
 新がこのまま、大きな大きな役者になったら、どれだけまぶしいことだろう。

 「仮名手本忠臣蔵 山科閑居」(九段目)
 団十郎、玉三郎、勘九郎、幸四郎、菊之助、新之助、そろい踏み。
 ドラマが複雑なのと、新之助の出番が少な目なので、また一階席でみた時に書こうと思う。
 新之助の力弥は、儚げで綺麗で、
 死んでも力弥と添い遂げようとする小波(菊之助)と似合いの一対だった。

 
 幕間。
 香ばしい良い香りにつられて、紅白白玉入り焼きたてたい焼きをおやつに食べた。
 幸せ。

 「芝浜革財布」(しばはまのかわざいふ)
 菊五郎の一幕。
 サラリと爽やかで、歯切れ良く気持ちよく、いかにも江戸の世話物!
 近くでオバサマ達が、「やっぱり音羽屋さんはいいわね〜」と頷きあっていた。


 ○○追記○○
 歌舞伎座のお正月風景など、プチ画像もアップしました。

 先月、すっかりとりこにさせられた「実盛物語」、
 こんな感想を読んで、また嬉しくなりました。

 次回の観劇は、来週の予定。
 新之助としては歌舞伎座では最後の舞台だよと言うと、
 それは是非観てみたいという母を、
 お誕生日のプレゼントに歌舞伎座に招待することになりました。
 母と一緒の歌舞伎座は、初めてもらったお給料で桟敷席をプレゼントして以来、もう何年ぶりになるんだろ。
 きっと珍道中になると思われ。
 楽しみですけど、ちょっと不安。
 


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