川底を流れる小石のように。  〜番外編〜  海老蔵への道!
もくじを見てみるひとつ前現在に近づいてプチ画像日記


2003年11月25日(火) 「武蔵」 楽前 素顔の新

 朝からどしゃ降り。
 昼前に銀行や買い物をすませる。

 夜の部とはいえ4:30開演なので、ザアザア降りの中、暖かくして出発ー!
 明日の千秋楽を前に、今日の舞台はどれくらい充実してるのだろうか?
 そしてようやく売り出されたという舞台写真は売り切れたりすることなく、首尾良く買えるのだろうか?
 あれこれ考えていたら、あっという間に演舞場。
 
 サクサクと舞台写真を購入。
 新のはたった5枚しかなかったので、迷わずすんだ。
 これで来月の歌舞伎座で、かまわぬ柄のブロマイドケースを買ってしまうのだ!
 へへ〜。
 (他にも例えば菊之助は、善き事きく柄とかあるらしい。新之助はやっぱかまわぬだ。)
 お弁当は何にしよ?と迷ったが、寒いのでまたおでん定食予約。

 今日の席は2列目花道わきあたり。
 南座で味をしめてしまったこの激近席で、完全燃焼するぜ!と一人意気込む。
 けど、着席するなり、まわりのばーちゃん達から話しかけられる。
 今日は随分見知らぬばーちゃんと話した。
 どうやらそういう日らしい。

 初日と4日に観て以来だったのだけど、
 新は随分、舞台武蔵に入り込んでいるようだ。
 表情はますます研ぎ澄まされて、熱いたけぞう。
 花道、たけぞうの引っ込み、七三で新が涙にむせぶと、
 振り払った涙も汗も降りかかってきそうに近くて、くう〜っとなる。

 二部は吉野太夫とのしっとりしたやりとりが、かっちょええ〜!
 宴たけなわの座敷を抜け出し、吉岡一門との二条城の戦いに呼び出される武蔵。
 降りしきる雪の中、相手をばっさり切り捨て、
 何事も無かったかのように座敷に戻る武蔵の頬に血がひとしずく。
 あれ、そなた血ではないのか?と見咎められると、
 吉野太夫が懐紙をさりげなく武蔵に手渡し、
 「緋牡丹のひとひらでございましょう・・・」
 チョンと柝の音。
 大向こうから京屋!成田屋!
 か〜っこよすぎ。

 おでん定食はゆっくり食べたいと思っていたら、
 ここでもばーちゃんにつかまる。
 それもまあいいか。

 第三部。
 しかしこの席は、今目が合いましたか?合ったんではないですかね?合ったですよね?
 みたいな事が無くもない席ではある。
 ナルホド、最前列のいかにもご贔屓という感じの方々、
 お着物あり、おめかしスーツあり、
 それぞれの気合いが違う。
 あんな、剣の道、真理の道をまっしぐらに目指してる武蔵と目があってしまったら、
 それはやっぱり卒倒ものだろう。

 ともあれ舞台は気迫に満ち、脇も豪華でイイ感じに練れてきて、
 あー良い舞台でありました。
 ただ一乗寺下り松から巌流島、新は右足首にテーピングしており、
 姿の美しい殺陣は健在ではあったが、ちょと心配。
 どうか明日の楽を無事に終えられますように。

 明日だけでなく、12月も来年もずっとビッチリと、
 大きな役、大仕事が詰まっていて、
 本当に祈るような気持ちだ。
 けど、カーテンコールの明るい笑顔を見てたら、大丈夫かとも思える。


 今まで出待ちはしたことなかった。
 いくらミーハーでも、そりゃあなんか違うだろう?というブレーキもあったし。
 けど、楽屋口前を通るときは、一応チラッと見てしまうのが人情。
 ことに演舞場は帰り道だし。
 今日はいつもとは様子が違って、にぎやかだ。
 黒塗りハイヤーがびっと止まっており、
 周りには先ほど劇場にいた、おめかしした女性達。
 おーこれはと思い足を止めると、
 調度そこへ団十郎と新之助が楽屋口から出てきた!
 素顔の新之助は、日焼けも薄れきれいな顔して、
 目深にニットキャップをかぶって、
 かぶいた私服で(赤いフリースっぽい、もこもこ花柄?のパンツだった!)
 軽く会釈して足早にハイヤーに乗り込む。
 ダンダンはさすがに立ち止まり、女性達のサインに応じてた。
 まさか生素顔新に会えるとは!
 なんだかボウーっとしてしまう。

 帰り道、私服の新の横顔とか思い出しながら、地下鉄に揺られる。
 ともかく私の11月演舞場はこれでおしまいなんだなあとしみじみ。
 
 


2003年11月04日(火) 2度目の武蔵。

 前日から風邪。
 飲んだ薬はあんまり効かなかった。
 朝の分を飲んでしまうと居眠りの心配があるので、薬中止。
 のど飴確認、鼻水止まれ!と念じつつチーン!と鼻をかんで出発。
 一昨日よりはスムースに演舞場到着。
 今日は一等席。
 4列目ではあったが、上手よりだったせいか期待したよりは見づらい。
 初日から比べると新のお芝居の細かなところがあちこち掘り下げられており、
 ほっとしたり嬉しかったり。
 間近で見ると格好良すぎて、木原敏江の時代物マンガみたいだ。
 どこまで美しくなってしまうんだろうこの人。

 昼は気分を変えて、外に出た。
 演舞場のお向かいの宮本亜門の実家だという喫茶店で、
 大勢のサラリーマンに混じって日替わりランチ。

 二日目からはカーテンコールをすることになったと聞いてた。
 巌流島の決着が、一瞬でついてしまうので、
 幕切れがアレ?ってかんじだったせいだろう。
 歌舞伎でカーテンコールって珍しいけど、嬉しいからヨシとする。

 帰り道、また新之助のママを見かけた。
 そうか、あの着物の色、初日も同じような色の着物を着てたけど、
 あれが海老色なんだなー!と遅まきながら合点がいく。
 海老蔵襲名まであと半年だからね。
 着物の着こなしがビシッとしていて、品があって似合ってた。
 しかも海老色のケリーなんか持っちゃって、
 それがまた似合うのが凄い。


2003年11月02日(日) 新橋演舞場 「武蔵」 初日

 気持ちよい晴れ。
 宮尾登美子の「きのね」を思い出し、
 デスクトップの壁紙にしてる武蔵新之助に手を合わせ、
 初日おめでとうございます!と声に出して言ってみる。

 大江戸線「築地市場」下車。
 予想外に大勢の人が降りたので、みんな演舞場行き?とびっくりしてると、
 その殆どの人は築地市場へ行くらしかった。

 初日らしく華やいで、着物姿の人も大勢。
 家庭画報に出てくる「親子で観劇の日のこんな装い」みたいな人ってのは、
 本当にいるもんなんだなーと感心。

 久々の演舞場だもの!演舞場名物(?と私が勝手に決めてる)おでん定食の予約。
 ここで予約を入れておくと、後で30分の幕間に
 お席にあつあつのおでんが用意されてる仕組み。

 本日の席は二等8000円、二階右側。
 この右ってのがミソざます。
 花道での見せ場が多いので、とにかく歌舞伎は右をとるに限る。
 三階4200円席でも右の一列目がとれたら、それはお得なチケットざます。

 一等席を4日に予定してるので、
 本日はリハビリもかねて、ちょっと高見の見物気分。

 けれども久々の柝の音を聞いてしまうとドキドキし、
 始まってしまうと、そんな余裕もなく、釘付けに!

 おおーー!生の新が、すぐそこに!
 あの目ぢから!あの躍動感!
 上手いというのとは違うが、舞台の空気をがっつり支配してしまう存在感は、
 オーラになって舞い上がり、
 二階席を通り越し、3階や高い天井まで届くのが見えるようだ。
 
 関ヶ原の戦場の場、
 又八と互いに生き残っていたことを喜び合い、
 花道を駆け抜ける新之助に「なりたやっ!」の大向こうの声が重なって、
 あのなんともいえない一体感。
 あーまさしく歌舞伎!あー新之助お帰り!と、胸が熱くなる。

 ぼうっとしたまま30分の幕間。
 おでん屋のカウンターに座ると、お隣の席は「山川様」とある。
 ふとみると、お馴染みの山川静夫アナウンサーがにっこり。
 歌舞伎が好きな人ならきっと、山川アナにはお世話になってる。
 この人の舞台への愛情や造詣の深さ、尊敬してる。
 こんな人の隣でアツアツのおでんー、緊張するぜ。
 店のおやじさんも、山川さんが大好きみたいだ。
 忙しい合間にあれやこれやと話しかけ、世話をやいてる。
 山川さんはつみれがお気に入りらしい。
 だいこんや玉子を関西風に薄い色のだしで炊いてあり、
 それにお箸でもって、絵を描くようにカラシをさらさらっと、
 実にいいあんばいに、きれいにぬっておられる。
 さっきからカラシがツーンと鼻にきてた私の食べ方とは大違い!
 茶飯に高菜漬けの細かく刻んだのをおかわりしてかけて食べてる。
 こっそりマネしてみたら、かなり旨かった。ふふふ。
 
 一足先に山川さんが席を立った。
 ふと見ると、イスに鞄が。
 これがまた、小さな茶色の皮の鞄で、
 愛らしいアンティークみたいな古び方で、山川さんらしい。
 しかも忘れてるし。ふふ。
 思わず、山川さんお忘れ物ですよーと声をかけると、
 いやはや最近トシですねえ、なんでも忘れちゃうの、ありがとう!と笑っておられた。
 

 二幕目、姫路城で3年の修行を終えた武蔵。
 キリッと美しい若武者姿で、そりゃあもう惚れ惚れ。
 だって睫毛があんなに長いんだよ!
 つけまつげじゃないのに、ライトを浴びて、睫毛の影が眉間にぴって映るんだよ!
 きりきりっと書かれた眉毛もりりしく、
 そしてあの声!!
 やー役者は声ですなあ。
 以前舞台で声を痛めたことがあり、
 それからは相当トレーニングつんだらしい。
 あの声、ずっとやられませんように。

 三幕目、一乗寺下り松。
 歌舞伎の殺陣は、ゆったりと舞うようなのが常なんだけども、
 そこは武蔵、新歌舞伎ということもあって、いつもよりはスピーディー。
 けど、格好いいものをたっぷりゆっくり魅せるという基本姿勢は変わっておらず、
 したがって、アナログマトリックス?みたいな、
 人力3D?みたいな、
 そんな殺陣で、ばっさりバッサリ斬りまくってた。
 ほほぉー。
 ちょっと感動。
 そして巌流島。
 ちょっと嬉しい演出もあり、新の目ぢからを堪能しまくり。


 すっかり生の新之助に魅せられた。

 とはいえ初日だからね。
 二度くらい脇の人の台詞がやばくてプロンプ入ってたし、
 あちこちギクシャクしていた。
 そして新之助がこんなに好きでも、
 源氏や武蔵みたいな新作の歌舞伎は、もう一つなんだと思う。
 間延びしてたり、無理矢理縮めてたり、暗転が多かったり、
 おしいな。
 難しいのかな。
 それが歌舞伎らしさ、というものなのだろうか。

 沢庵和尚の団十郎は、台詞を聞いてると、父の言葉そのままという気がしてくる。
 城太朗役の子役がすごくて、人気者になってた。
 無邪気なコドモにはやられるけど、ちょっとやりすぎ?ってくらい凄い子役だった。
 新は子役と一緒にいるのが似合う人だ。

 帰りがけにロビーで、あ、この人絶対新之助のママだ!と思った女性がいた。
 目元や鼻筋がそっくり。
 気丈そうで、でも気さくそうでもあり、梨園の妻ー!って感じのママだった。

 銀ブラしながらの帰り道、半袖の人もちらほら見られるくらいあったかい。
 
 4日の観劇姿勢への改良点を自らにあげつつ、帰宅。


 ○○後日の反省・追記○○
 大河ドラマが終わってみると、毎週新之助をテレビで見ることができなくなって、それは寂しい。
 けれど、この長丁場のドラマ撮影のために、新はずーーーっと舞台に立っていなかった。
 この初日をどんなに首を長くして待ったことか!

 宮尾登美子「きのね」は、思えば私が歌舞伎にはまるきっかけになった本。
 当時はハードカバーで読んだので、この本のモデルが実在することも、
 それが新之助のじいちゃん、十一代目市川団十郎であることも、
 全然知らなかった。
 あれ以来、何度も読み返しては、感慨も新たに涙してしまう。


しま |てがみもくじを見てみるひとつ前

いわゆる投票ボタンです。ぽちっ?

My追加
「エンピツ」な方々用、新鮮お届け。