| 2001年12月19日(水) |
ディック・フランシスの「黄金」は今日も面白い。 |
ディック・フランシスの「黄金」は今日も面白い。142ページまで面白さは一定に維持されている。交通事故で脳障害になった義理の兄弟ロビンのことで主人公のイアンと父親マルカムが親子の絆・信頼を回復する場面はさりげなく秀逸である。 マルカムが5回結婚したせいで生まれた義理の家族が次から次へと登場してイアンを閉口させる一連の場面もいわば人間喜劇的で傑作だが、語り手でもあるイアンの秀でた人間観察力・洞察力が何よりも楽しい。これほど人に対する批評や判断が的を射ている人物に共感できれば面白くないわけがない。 危機一髪というシーンはまだ自動車に襲われた時だけなのに、禁欲的な感じのイアンの内面の語りや財産分与目当ての義理の姉や兄などの襲来によって十分サスペンスが醸し出されている。 ディック・フランシスはやはり語りの名手である。 二十年以上も前から読んでいるのにまだ面白く読めるのはこちらが進歩していないからだろうか。それともあちらが進歩し続けているからだろうか。
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