――前の飼い主のお話を聞かせてください。
ラウ「……あまり、印象に残るような者ではなかった。常に私を傍に置きたがっていたというくらいだろう。――なんであろうと、結局は身代わりでしかない」
ロイ「理想の一家、とでもいうのだろうな、彼らは。みなとても優しかったよ。その時間がずっと続くものだと、信じて疑っていなかった。――あの日、ヒューズの目を見るまでは。……それでも、不思議なものだな。悲しいとは思ったが、彼らを恨むような気は一切ないのだよ」
セイ「前の飼い主、ね。彼は……そうだな、対外的には明るく気さくな男だったようだけど、家の中ではそうでもなかったな。今の飼い主は裏表がないけど、彼はなんていうか……何もない内面をたぐい稀な社交性で隠してる感じかな。だからこそ、人からもらった僕を別の人間に預けてまで外に出たがったんだろうしね」
――今の飼い主はどうですか?
ラウ「……どうというものでもない。用がないのになにかとかまわれるのは迷惑だ」 セイ「その割に、嬉しそうに見えるけど?」 ロイ「何だかんだ云っても懐いてるなどということは、見ていればよくわかるな」 ラウ「……(なぜか怒っているらしい)」
ロイ「あいつはいいぞ。文句を云いながらも私の要望には一応きちんと応えるし、こまめに世話もするしな」 セイ「君も、なんとかいいながら今を楽しんでいるよね」 ロイ「もちろんだとも」
セイ「そうだね、最近やっと僕の生活パターンに慣れてきたようだよ。最初はあまりに生真面目でどうしようかと思ったけど、真っ直ぐな奴は嫌いじゃないよ」 ロイ「全く正反対の性質に見えるがな」 セイ「だからこそ、というのもあるのかもね。何かと不安定だったときもあったようだけど、今はだいぶ落ち着いてるみたいだし」 ラウ「飼い主だけとも思えなかったがな……」 セイ「――っから、それはもういいってばっ」
――つまり、大好きということですね。
セイ「そこからどうして『つまり』にたどり着くのかが全くわからないんだけど」 ロイ「ふむ、好きか嫌いかと云われれば『好き』なのだろうが」 セイ「そうだね。――というか僕は、嫌いな奴はまず意識から排除するから、そういった意味では至極単純な答えだと思うけど」」 ラウ「……」 ロイ「……ラウ?」 セイ「……ラウ、黙秘権は認められていないよ?」 ラウ「……………………嫌いじゃ、ない」
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