| 2004年04月08日(木) |
君に会いたい <続・君がいるから> |
「それでなー、部屋に戻ってみたら、なんと今まで姿を消してたラウがベランダにいてだな――」 「……フラガさん、それもう10回くらい聞きました」 「ん? そうだったか?」
全く悪びれないムウさんに、キラくんは思わず深々と溜息をついてしまいました。
ラウがムウさんの元に残ると決まってから数週間後。 ……ムウさんは、正真正銘の猫バカ(親バカとも云うのでしょうか)になっておりました。 猫バカというよりもむしろバカ飼い主だろう、とキラくんは思いましたが、もちろんあえて口にはしません。 ムウさんとラウが離れずにすんだことを、最初こそは一緒になって喜んでいたキラくんでしたが、会うたびに飼い猫の自慢話・惚気話をするムウさんには流石に閉口してしまいます。
「じゃあ、これは話したか? あたたかい日のことだ、ベランダに出たラウを追って俺が――」
やはり喜々として語り続けるムウさんに、キラくんは諦めたように肩を落しました。 毎回猫の話ばかりされるのはなんですが、実のところキラくんにとってはそれほど嫌なことではないのです。 あの頃、ラウの飼い主が現れたときやそれ以前のムウさんを思えば、今のこの状況はかえって良いことだと思うからです。 いつでも明るく、誰にでも分け隔てなく接するムウさんでしたが、キラくんから見るといつもどこか自分以外の存在に線引きをしているような気がしてならなかったのです。 だから、誰かに本気で夢中になれるのならば、それはきっととても良いことだと思うのです。 思うのです、が。
(ちょっとこれはいきすぎかなぁ……)
これではまるで、幼い愛娘を溺愛してやまない父親のようです。 今にもラウの写真を取りだしかねないムウさんに、キラくんはやはり少しだけ溜息をついてしまいます。 ふと時計を見上げて、キラくんは気づきました。 そろそろムウさんの休憩時間が終わろうという時間でした。 この辺りで話を止めないと、きっとムウさんは延々とラウの話を続けるだろうことは経験上わかりきっています。 できるだけさり気なく話を変えなければとキラくんが口を開いたそのときでした。
「キラ? ――キラ・ヤマト?」
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