日記のような語りのような。

2004年03月10日(水) 出会い@ムウ

それは、ムウさんが仕事から帰る途中のことでした。
その日ムウさんは定時に仕事を終え、その後食事や飲みに誘われも誘いもしなかったので、のんびりと駅前のスーパーで買い物をして家までの道を歩いていました。
(ちなみに恋人もいませんのでデートの予定なんかも入っていません)
そのときです。
電信柱の陰で何かが動いたような気がして、ムウさんは足を止めました。

「……?」

近寄って覗いてみると、そこには薄汚れた小さな塊がありました。
足元にあった小枝でつついてみると、その塊は押されてごろんと転がりました。
そしてひょっこりと覗く三角形が二つ。

「……猫?」

ムウさんの思った通り、どうやらそこにいたのは猫だったようです。
死んでいるのだろうかと思い、ムウさんはおそるおそる猫に手を伸ばしました。
小さな身体はまだあたたかく、心臓も動いているようでした。

「生きてる……」

ムウさんは慌てて猫を抱き上げました。
まだまだ小さい仔猫で、大きさはムウさんの両手を軽く開いてすっぽり収まるくらいです。
よく見てみると、仔猫の首には細い首輪がしてありました。
身体と同様に首輪もボロボロでしたが、ムウさんは首輪につけてある金属のプレートを見つけました。
そこには何か文字のようなものが刻まれているようです。

「名前…?」

プレートも傷だらけでしたが、かろうじて文字に見えないこともない線を、ムウさんは必死で追ってみました。

「R、A…W…W……ラ、ウ?」

そのとき、手の中の仔猫がぴくりと動きました。

「ラウ? お前、ラウっていうのか?」

仔猫はそれ以上動きませんでしたが、返事の代わりにか細く「みゃー」と鳴く声が聞こえた気がしました。

「とにかく、暖めて何か餌やらないとな」

ここまできて放っておけないのがムウさんです。
猫用のトイレや餌といった必要なものを買ってきたり、飼い主を探すなどやるべきことはたくさんあります。
けど、と手の中の仔猫の頭を指先で撫でて、ムウさんは思いました。
とりあえずは仔猫――ラウが元気になるのが先だ、と。


2人――いえいえ、1人と1匹はこうして運命的に出会うことになったのです。


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紗月 [MAIL]