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2006年03月22日(水)  思い出の人は思い出の中にしかいない
ろくに誰から電話がかかってきたかも確かめずに電話に出た。
頭の中で仕事のことばかり考えていたので、バイブする携帯電話に無意識に手が伸びてぼんやりと「もしもし」と答えてしまったのだ。

もしもしと返ってきた心許なさそうなその声は。
あれからどれくらい時間がたったかはもう思い出せないくらい、久しぶりの声だった。
今のお互いの状況を知るためにいくつかの質問を重ねなければならないくらい、とても長い時間がたったということだ。

苦い思い出になっている。
だけどときに、苦い思い出というものは、最も多くふと思い返してみたくなる感情だと思う。
それは自分にとっての慰めなのか、自己陶酔なのか、相手への恨みなのか、それはわからない。

もう僕のことを嫌いになってしまったんだろうね、と彼は言う。
僕のことをひどく怒っているだろうね、と彼は言う。
恋人に優しくしてもらっているかい、と彼はたずねる。
最後に、淋しいよ、と言った。

つくづく彼は淋しい人なんだと思った。
そして今、もっとも淋しいんだろうと思った。
そもそも淋しい人がもっとも淋しい瞬間。
早くおうちに帰りなよ、そう私は答えた。
夜空の桜を見上げながら、別れと出会いを予感させる春を感じて、再会の電話を私は切った。
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