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| 2006年01月11日(水) 元気で |
| 気持ちいいねえ。 ぽかぽか陽のあたるテーブルに座って、紅茶を飲んで、「気持ちいいねえ」と言って、ただそれだけ。昔の恋人という男の人と会うのはあまり居心地がいいものではないかもなと、最近思い始めた。 好意を持っているかといえば好意を持っているであろう。 好意を持っているのは確かだけれど、「好き好き、いやいや、離れていたくない」と大きな声で叫ぶほどでもなく。 居心地が悪いのは、普段の調子が出るまでに、エンジンがかかり出すまでにやや時間が必要だよね、というよそよそしい空気やギクシャク感があるからなのだ。 遠い遠い、私の行ったことのない国に住む彼は、こうして帰国してきた。 休暇のあいだ、久しぶりの友人にたくさん会い、日本での仕事のコネクションをたくさんつくって、親孝行をして姪を可愛がり甥を可愛がる。 私たちが別れるとき、彼の姪が生まれた。 その子はもう4歳になったという。携帯電話で彼と姪が映った画像を見せてもらった。私が覚えている彼女の面影がうっすら残っていた。 彼に、「恋人をつくらないのか」という話しになって、向こうの国の女性はとても積極的で一緒にいて楽しい子が多いけど、ただそれだけで終わってしまうと彼は言う。大事な人が欲しいとは、特に思わないと言った。なるようになるよ、と彼は笑った。なるようになるものだろうか、と私は思った。 私はもっと大人になれるだろうか。年齢のことを言うのではなく、もっと大人になれるのだろうか。 恋人は、私にとって恋人であり親友であると思う。 親友である恋人だった人と、恋人を解消してからも会えるということはとても稀だと思う。 親友のままでいられるということは稀だと思う。 私たちは、悲惨な修羅場で別れたわけでもなく、想いを残したまま別れてしまった。少なくとも私はそう思っている。この人とまだ付き合っていれば?結婚していれば?この人の子供を産んでいれば? もしもの話ならいくつだって想像できる。 だから、もっと大人になれればいいのにと思う。私が混乱しているのは、私がまだ子供だからだと思える。彼を、恋人抜きの親友だけの存在に思おうと努力している私の姿は、とても滑稽だと思える。 悲しい話である。 別れ際、キスをしようかと思った。 キスをしてしまえば、もうそれで気が済むじゃないかと思った。 もうそれで今戸惑っていることは消え去ってしまえると思った。 けれど、そうすることによって新たな問題が待ち受けていることも知っている。 迷うことはない、キスをしてはいけない。 「じゃあ、また帰ってきたときに」 そう言って、彼は空港に向かった。 彼が日本で最後に会ったのは、この私。 大切に思われているということじゃないか。それだけでもういいじゃないか。 私はそう思うことにした。 「元気で」 私はそう言って、彼の乗ったリムジンバスは走り去っていった。 |
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