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2005年11月25日(金)  雨が本を濡らす
私はどこかの図書館に行った覚えがある。
あれはどこだったろう。

東京のどこかの小さな街。
私の家からもそれほど近い場所ではなかったのに、私はなぜかその図書館にしかない本を読むために、そこにいた気がする。

天井まで届きそうな本棚は、本を探す人がすれ違えないほど密接していて、古い古い紙の匂いがした。私はこの匂いが嫌いじゃない。

外は雨が降っている。
もう夕方で、そのうち暗くなっていくだろう。
壁一面が広くて大きな窓だった。
その窓からは、大きな道路が走っていているのが見える。ヘッドライトをつけた車がたくさん走っている。渋滞している。雨が降っている。もうすぐ暗くなる。
私は、外の渋滞の音を聞きながら、本を探している。
夜の雨の気配を感じながら、本を探している。
くるりと本棚を曲がったすぐそこの棚に、探していた本はある。
私は手に取り、ページをめくる。

あれはどこの図書館だったろう。
そのページをめくり、探していたものを見つけたときの安堵感。
探していた誰かの名前をその本に見つけた。
そして私は安心して、本を閉じもとの場所に戻した。

あれはどこの図書館だったろう。
じめじめした空気が本を濡らしていく。
私は窓を閉めて、その図書館を立ち去った。
その後、どうやって家に帰ったかは覚えてない。


あの名前を、私はどうして探していたのだろうか。
何を知りたくて、探していたのだろうか。
あれはどこの図書館だったろう。
あの図書館は本当に存在したのだろうか。
私は本当にあの図書館に行ったのだろうか。
何も覚えていない。
何も覚えていないけれど、私は何かを覚えている。
現実と虚構が入り混じっている記憶。
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