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2005年11月14日(月)  シャワーの音
彼は走る。
彼は走っている。

冬の夜道を、ランニングシューズを鳴らして彼は走っている。
規則正しく呼吸の音が聞こえるだろう。彼は走っている。

シャワーを浴びた後、伸びた前髪が気になってハサミで切った。
真っ黒に濡れた髪の毛がぱらりとゴミ箱に落ちていった。
私は自分を責めることしか出来ないことにひどく歯痒い思いがする。
いつだってそうなのだ。
私は自分を責めることしか出来ない。

今ごろ、彼はどの辺りを走っているのだろうか。
何かを振り切るように、何かを忘れるかのように彼は走っているのだろうか。
恋人の気持ちがわからなくなる。


ひとりで暮らしていると、ユニットバスでシャワーが流れる音を聞くことはない。
自分以外の誰かが、ひとりで暮らすこの部屋を訪れない限り、その様子を聞くことは出来ない。
壁の向こうで水がはねる音がする。水が流れていく音がする。
冬の夜、汗をかいて戻ってきた恋人が、シャワーを浴びている。
その音を、私はベッドにもぐって聞いていた。
真っ暗な部屋の中でただひとつ灯りがついているのは、彼がシャワーを浴びているバスルームの中だけだ。

私は恋人に背を向けて目を閉じていた。
やがてベッドが揺れて恋人が寄り添ってくる。
私の膝の裏に自分の膝を、私の背中に自分の腹を、私の髪の中に自分の顔を埋めて。

恋人は冬の夜道を走っている。
白い息を吐いて彼は走っている。
玄関に置かれたランニングシューズ。
カゴに放り込まれたタオルとTシャツ。
脱ぎ捨てられたジャージ。
私の背中に寄り添って眠る恋人。
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