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| 2005年05月16日(月) テトリス |
| 社会人になりたての頃、仕事は『テトリス』みたいなものだと思っていた。 大学4年生の後期から私は社会人になった。 金曜日の午前中だけ学校に行き、そのほかの時間を私は社会人として使った。 上からどんなブロックが落ちてくるかはわからない。 なるべく隙間をつくらないで、上手くブロックを積み重ね、組み立て、横一列に並んだブロックを消していく。 どんなケースの仕事が舞い込んでくるかはわからない。ミスをしないよう上手くこなし、仕事を端から片付けていく。 高得点を狙って、あのブロックが落ちてくるまで辛抱強く待つ。待っていたブロックが落ちてくれば、一度に4列も消し去ることが出来るんだ。 コツコツと作業を進め、大きなチャンスがくるまでじっと辺りを窺う。チャンスが来れば一気に何百万という契約が受注できるんだ。 その作業は、テトリスに似ていると思った。 仕事はゲームみたいだと思った。 如何に効率的に仕事をするかを競うゲームのようだと思った。 如何に高額な契約を受注するか、それを競うゲームのようだと思っていた。 でもある日思った。 ゲームはルーチンだ。 自分の手のひらの中で、ブロックを消し続けていくゲームなんてつまらなくなった。 今日、細長いテーブルの端と端に腰掛けた私とクライアントは、じっと真正面でお互いを見据え、私は相手の言葉を待っていた。キリキリと胃の痛む瞬間だった。周りの椅子には、競合他社の営業担当が座り、私の言葉に対してクライアントがどんな言葉を返してくるのか、固唾を呑んで見守るものもいれば、楽しげに眺めるものもいた。 キリキリと胃の痛む瞬間だった。 私はそのクライアントの人間を恐れているし、様子を窺ってもいる。 だけど、私は言わずにいられなかったのだ。 相手を怒らせたいわけでもなく、相手に嫌がられたいわけでもない。 私はその人を恐れているからこそ、その人に興味があったのだ。 彼がどう思うのか、私はそれを知りたかったのだ。言わずにはいられなかったのだ。 胃は痛むけれど、その相手に私は期待していたのだ。 彼はきっと私を見据えて答えてくれるだろうと期待したのだ。 これはゲームじゃない。 きっと見据える相手の目に、私はもう一度まばたきをして相手を見つめ続けた。 テーブルの端と端、私たちはそんな時間を過ごした。 人間はテトリスのブロックなんかじゃない。 |
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